不動産経済研究所が1月19日に発表した「12月の首都圏マンション市場動向」に対して、マスコミ各社のネットニュースを読むと、いまだに“好不調の境目とされる70%”という枕詞とともに“契約率”に言及している記事を見かける。
契約率70%は、本当に“好不調の境目”といえるのか?
以前にも記したが(「契約率」では実態が分からないのではないか)、年間8万戸も供給されていた時代ならともかく、ここ数年のマンション不況下においては、もはや「契約率」という指標は、実態を適切に表現できていないのではないかというのが、筆者の問題意識。
契約率の分子(売却戸数)と分母(発売戸数)の間には、強い”従属関係”がある。
そのため、契約率という指標は、売却戸数(分子)が減少してくる(売れ行きが悪くなる)と、供給量の下方修正によって発売戸数(分母)も減少してくるという“負のスパイラル状態”を適切に表現できていないのではないか。
不動産経済研究所が過去に発表しているデータをもとに、首都圏マンションの「発売戸数」と「契約率」の関係をグラフにすると、そのことがよく見える(グラフ参照)。
08年の契約率(月平均62.5%)・発売戸数(月平均3,650戸)に対して、09年の契約率は70%近くまで(月平均69.6%)上昇するものの、逆に発売戸数は減少(月平均3,032戸)している。
つまり、発売戸数が抑制(08年:月平均3,650戸 ⇒09年:月平均3,032戸)されたことにより、契約率が62.5%(08年)から69.6%(09年)に上昇しているに過ぎない。