不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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「マンション・チラシ倍率」は、「契約率」の代替指標になり得るか

マンション市況の好不況の目安と言われている契約率70%という数値。
不動産経済研究所が毎月中旬に発表している「首都圏のマンション市場動向」を読むと、契約率の定義は、次のとおりであることが分かる。

契約率=当該月の売却戸数÷当該月の発売戸数×100

筆者は、これまで当ブログで何度か「そもそも契約率の分母となる発売戸数そのものも下がっているのだから、契約率という指標は、実態を適切に表現できていないのではないか」という趣旨を記してきた。
「契約率」という指標は、売却戸数(分子)が減少してくる(売れ行きが悪くなる)と、供給量の下方修正によって発売戸数(分母)も減少してくるという“負のスパイラル状態”を適切に表現できていないのではないか、と筆者は考えている。
もっと分かりやすくいえば、数年前の契約率70%と最近の契約率70%では、数値の持つ意味が違うのではないかということだ。
「契約率」以外に、マンション市況をもっと的確にとらえた分かりやすい指標はないのか?
次式で定義される「マンション・チラシ倍率」なる指標はどうだろうか(もちろん筆者の発案によるオリジナル指標だ)。
マンション・チラシ倍率=当該月の1世帯当たりの平均マンション・チラシ枚数÷当該月の発売戸数×10,000

上式は、「マンション・チラシ倍率」が、発売戸数1戸に対して、1万世帯に配布されたマンション・チラシの枚数の割合であることを表わしている。
「マンション・チラシ倍率」が「契約率」の代替指標になり得るのではないかと考えたのは、次のような仮定に基づいている。

  • マンション市況が好調であればマンション・チラシをたくさん打たなくても売却できから、マンション・チラシ倍率が下がる。
  • 逆にマンション市況が不調であればチラシ枚数が増え、マンション・チラシ倍率が上がる。
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実際のデータをもとに、グラフを作成してみた(次図参照)。
http://d.hatena.ne.jp/images/diary/f/flats/2008-09-21.jpg

「販売戸数」「契約戸数(売却戸数)」「マンション・チラシ倍率」は、いずれも季節変動が大きく、傾向を視認しにくいので、右上図では、2004年の月次データを基準に指数化した。
なお、マンション・チラシ倍率のもととなる「1世帯当たりの平均マンション・チラシ枚数」データは、(株)朝日オリコミのホームページに公開されている首都圏のマンション・チラシ「1世帯平均配布枚数の月次推移」データを用いた。
右上図からは、昨年8月から契約率は70%を大きく下回り始めるとともに、発売戸数と契約戸数(売却戸数)との差が広がり始めている(=在庫が積み上がっていく)様子が見てとれる。
また、マンション・チラシ倍率(‘04年同月比)も0.8を大きく超え始めているのがわかる。
ただ、「契約率」のほうは、先月(8月)に70%をなんとか超えた(70.9%)のに対して、
「マンション・チラシ倍率(‘04年同月比)」のほうは、依然として、0.8を大きく超えたままである。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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