不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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サービスルームの正体

「サービスルーム」と聴いて、ホテルのルームサービスを思い浮かべるのは筆者だけでしょうか。どことなく高級感が漂う呼称ですが、実態は全く違います。
建築基準法上の「有効採光」が確保できない「部屋」をカモフラージュするための呼称です。
建築基準法では、居間・キッチン・寝室・子供室など継続的に使用する「居室」には、窓などの開口部を設けなければならず、その「居室」の床面積の1/7以上の有効採光面積を確保する必要があります。
窓面積=有効採光面積ではありません。同じ大きさの窓でも、窓の位置や隣接建物との距離によって、有効採光面積として認められる面積が異なってきます。
ややっこしい計算を端折って言えば、隣に建物が迫っていると、窓を設けていても採光上有効な開口部とならない場合があるということです。

有効採光面積が確保できない部屋は、「居室」とは認められません(建築確認申請が受理されません)。そこでデベロッパーは、申請手続きを完遂するために、トイレや浴室と同様、非「居室」扱いになるよう、例えば「納戸」といった部屋名で申請することになります。
確認申請が受理された後に配布可能となるチラシには、「納戸」ではイメージがよくありませんので、「サービスルーム」といったプラス・イメ-ジの言葉で粉飾するわけです。

このあたりの解釈について、某区の建築審査係りに電話取材してみました。

  • 筆者「有効採光が確保できなくて、『サービスルーム』と表示されていると思われるマンション物件があります。広さが8畳あり、購入者は居室として住まう可能性が大きいのですが、建築確認手続き上は、どのように処理されるのでしょうか?」
  • 建築審査係り「『居室』でなく、『納戸』という申請であれば、役所としては申請を受理します。マンション会社としては、『納戸』では売りにくいでしょうから、サービスルームなどの名称で宣伝しているのでしょうね」
  • 筆者「法的には問題ないのでしょうか?」
  • 建築審査係り「買い主が有効採光を確保できていないことを承知でその住戸を購入する分には問題ないと思います。仮に、『サービスルーム』を子供部屋として使ったとしても、買い主が納得ずくのことであれば、役所としては文句を言える筋合いのものではありません」
  • 筆者「では、役所が実施する竣工検査の際に、居室的な『納戸』でも、検査を合格できるのでしょうか?」
  • 建築審査係り「例えば、豪華なシャンデリアが付いている『納戸』を見て、役所として、『居室』の疑いを指摘することはできても、それも理由に不合格とすることはできません」

要するに、「サービスルーム」とは、日本語に置き換えると「納戸」のこと。採光条件の劣る「部屋」と同義です。「サービスルーム」のついた住戸の購入を検討される方は要注意です。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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