不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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賃貸住戸率70%の超高層マンションは、スラム化を回避できる?

2つの駅が直結した40階建ての超高層マンション。

有楽町駅直通7分、豊洲駅直結(徒歩1分)。総戸数560戸(分譲総戸数87戸、都市再生機構賃貸住宅395戸含む)、40階建。販売戸数未定、1LDK(45.88m2)〜4LDK(100.78m2)。販売価格未定。平成18年9月竣工(本チラシ掲載日の1年2カ月後)。

  • タワーライフの醍醐味を感じる、豊かな開放感や雄大な眺望をお楽しみいただけます。

眺望の良さをうたった、超高層マンションは多々あるが、本物件の特徴は、次のコピーに表れている。

  • 33階以上の上層階を中心とした分譲住戸をご用意しました。

ということは、32階以下の住戸は、分譲ではないのか?
「物件概要」によると、住宅総戸数が560戸。うち分譲総戸数が87戸で、都市再生機構による賃貸住宅が395戸だ。
でも、数が合わない。
78戸(=560戸−87戸−395戸)の住戸が分譲住戸でないとすれば、いったい何なのか?
電話取材してみた。

  • 筆者「住宅総戸数が560戸。分譲総戸数87戸、都市再生機構賃貸住宅395戸となっていて、数が合いません。87戸分は、どうなっているのですか?」
  • 男性販売員「地権者用の住戸となっています」
  • 筆者「チラシでは、33階以上が分譲住戸となっていますが、32階以下は、地権者と賃貸住戸なのですか?」
  • 男性販売員「地権者の住戸は、最上階と中層階・低層階です。賃貸住戸は32階以下を予定しています」
  • 筆者「最上階は地権者の住戸ですか・・・・・・。ということは、分譲住戸は、33階から39階ということですね」
  • 男性販売員「いいえ、5階・6階も分譲住戸に割り当てる予定にしています」

本物件の最大の特徴は、総戸数560戸のうち、賃貸住戸が395戸(70.5%)と大きな比重を占めていることだ。分譲住戸は87戸(15.5%)、地権者住戸は78戸(13.9%)。
一般的に、大規模マンションの場合、維持管理・運営を実施するうえで、住民の合意形成に多大な労力を要することが多い。特に、老朽化マンションの維持保全をどうするのか、建て替えるのかといった問題になると、住民の利害がなかなか一致せず、暗礁に乗り上げる。
でも、本物件の場合、賃貸住戸395戸の貸し主である都市再生機構が議決権の70.5%を握っているので、議事が進めやすい。
集会の「普通議決」であれば、区分所有者および議決権の各過半数(50%以上)の賛成で足りるから、都市再生機構が賛成票を投じれば、可決される。
また、建て替え決議を除く「特別決議」であっても、区分所有者および議決権の各4分の3以上(75%以上)の賛成でOKだから、都市再生機構の基礎票70.5%があれば、残り5%(=20戸)の上積み票が確保できれば、可決できる。
建て替え決議となると、区分所有者および議決権の各5分の4以上(80%以上)の賛成が必要。都市再生機構の基礎票70.5%に、残り10%(=56戸)の賛成票を取り込めれば、可決できる。
このように都市再生機構が70.5%の大きな議決権を有していることで、マンションの維持保全を適切に実施しやすいことから、マンションのスラム化問題を回避することができる。
マンションを分譲住戸だけで構成せずに、都市再生機構のような大資本による賃貸住戸を含めることは、大規模マンションのスラム化問題の解決策のひとつの姿なのかもしれない。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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