不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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消費者不在の「不動産の表示に関する公正競争規約(改正案)」に物申す

見栄えのいい写真やCGを多用し、消費者にとって何ら有用な情報を伝えていないマンション・チラシが巷にあふれている。
チラシに記載すべき情報、具体的な記載の方法などを定めたルールとして、「不動産の表示に関する公正競争規約」がある。同規約は、不動産業界が自主的に定め、公正取引委員会の認定を受けた不動産広告のルールだ。
不動産公正競争取引協議会連合会のホームページには、今年度の改正に向けて次のような記載がある。

規約創設以来41年を経過し、この間、時代の変化に対応して12回の大きな見直しを行ってきたが、その結果、その内容は膨大かつ複雑なものとなり、見づらく、分かり難く、使い勝手の悪さが目立つようになった。
そこで、規約をより身近なものとするため、見やすく、分かりやすい規約を目指すとともに、時代の変化に対応するルールの確立を目指して、過剰な規制の整理、新たな問題に対応する規定の整備、公正で効率的な措置手続の整備の4つの観点から全面改正を行うこととしたものです。

ホームページに公開されている同規約(改正案)を読むと、「自由設計型マンション構想(第5条の4)」やCG(第21条41項)が追加されるなど、時代の要請に応じた変更が見て取れる。
でも、改正の作業主体が業界団体のせいか、消費者利益の擁護をうたっているわりには、もうひとつ踏み込んだ内容になっていない。
「見やすく、分かりやすい規約を目指す」というだけあって、テニオハの類や用語の修正など、形式的な修正が多い。規約の見やすさ、分かりやすさは、あくまでもチラシを作る側のニーズだ。

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そこで、筆者のこの1年間のマンション・チラシの研究成果を踏まえ、消費者の利益に資するような改正項目(私案)を以下に示す。

  • 配置図の表示義務化
    • マンション棟内の住戸位置による得失(日照・通風、エレベータ・屋外階段との位置関係)、道路や隣接建物との関係など一目瞭然となる。
  • 幹線道路騒音・鉄道騒音の表示義務化
    • 客観性が担保された騒音データの表示は難しいことから、例えば、幹線道路・鉄道までの直線距離の表示を義務付けてはどうか。
  • 間取り図に方位記号の併記を義務化
    • 非南面住戸のデメリットを隠すべく意図的に方位記号を表示していないチラシを排除する。
  • 階高・天井高の表示義務化
    • 居住空間の豊かさを知るには、床面積だけでなく、高さ情報も重要。特に階高は、工事費(資産価値)に大きく影響する。
  • サッシ・床・戸境壁の遮音性能の表示義務化
    • 生活騒音は、マンション・トラブルのワースト2国土交通省「平成15年度マンション総合調査結果」) 遮音性能に係る設計住宅性能評価を取得した物件は、具体的等級の表示を義務化(等級を明示できない物件は、市場競争力を失う?)
  • 契約済み戸数の表示義務化
    • 売れ行き情報は、消費者にとって重要な判断材料のひとつ。
  • ペット可に係る具体的な仕様の表示義務化
    • ペット専用足洗い場、ペット同乗表示機能付きエレベータ、床・壁のペット対応仕様など、どの程度「ペット可」仕様となっているのか明確化する。具体的なペット対応仕様を有していない「ペット可」マンションとの区別を明確にする。
  • 用途地域の表示義務化
    • 一部のチラシでは表示されていないことがある。役所で調べればわかることなので、表示を徹底する。
  • 周辺施設写真を掲載する場合の直線距離の表示義務化
    • あまりに遠方にある人気スポットを「周辺施設」扱いするのは、いかがなものか。直線距離表示を義務付ければ、消費者が「周辺施設」の利用可能性を判断しやすくなる。
  • 収納率の定義の明確化
    • トイレ上部の収納棚や流し台・洗面台下部の収納部分まで、収納面積に計上するのは認めない。収納率の定義を明確化し、物件相互の比較をしやすくする。

以上の改正項目(私案)の実現により、不良物件が淘汰され、日本の居住環境の向上とともに、終の棲家にふさわしい物件が増えることを切に願う。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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