不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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高層マンションは、大震災時には巨大棺おけ化する?

大手町駅直通13分、駅徒歩3分。総戸数644戸、45階建。販売戸数10戸、2LDK(80.40m2)〜3LDK(88.81m2)。販売価格未定、最多価格帯5,300万円、6,700万円。平成18年6月中旬竣工(本チラシ掲載日の1年5カ月後)。

確かに、45階建ての超高層マンションは倒壊することはない。でも・・・

  • 1/29(土)構造設計説明会開催(予約制)

45階建ての超高層、大規模マンション。「超高強度コンクリート」、建物中央部のボイドを中心として、柱・梁を3重にめぐらせる「トリプルチューブ架構」、地震のエネルギーを効果的に吸収することにより、建物の揺れを小さく抑える「制震間柱(鋼製)」などが採用されている。
有名な設計事務所の設計、スーパーゼネコンの施工であるので、建物の耐震性能についてはまず問題ないだろう。
現行法規に準じていれば、大地震が起きても、確かに建物自体には問題ない。
建築基準法施行令を要約すれば、建物に要求される耐震性能の考え方は、次のとおりだ。

  • 建物の耐用年限中に数度は遭遇する程度の中地震(=震度5強程度)に対して、建物の機能を保持すること。
  • 建物の耐用年限中に1度遭遇するかもしれない程度の大地震(=震度6強〜7程度)に対して、建物にひび割れなどの部分的な損傷が生じても、最終的に建物が崩壊しないよう人命を守ること。

つまり、たとえ関東大震災級の大地震が起きても、この45階建ての超高層マンションは、柱・梁、壁面などにひび割れが生じることはあっても、マンション自体は倒壊しないように設計・施工されている。だから人がマンションの下敷きになることはない。
でも、マンションの機能の喪失は、震度4の地震から始まることに注意が必要だ。

エレベーターが復旧するまでの間、毎日階段を上り下りできるのは登山家だけ?

最近のマンションのエレベーターには、一般的に地震監視装置がついている。地震を感知すると、最寄り階まで運転し、扉を開けて停止する。震度が4未満の場合には、約60秒後に自動的に運転を再開する。
しかし、震度4以上の地震の場合には、2次災害を防止する観点から、自動的に運転再開とはならず、休止状態となる。運転を再開するためには、メーカーの専門技術者の点検・整備を待たなければならない。
エレベーターの台数は、都内20万台。大震災時には、修復に当たれる専門技術者の数には限りがあるだろうから、復旧には1カ月は覚悟する必要があるかもしれない。
その間、上層階の住民は、たとえ住戸に損傷がなくても、毎日階段を上り下りするのは困難だろうから、一部の登山家を除けば、住み続けることはできない。

危機管理体制のない高層マンションは、とても危険な状態にある?

  • 24時間遠隔監視システムで警備会社が迅速対応

いくら、24時間監視をしていても、大震災時には無力だ。膨大な数の顧客からのリクエストに迅速に対応することは、ほとんど不可能だろう。
問題解決能力のない管理人だけでは、超高層マンションは、棺おけ化してしまう。
本マンションは、オフィス棟、ショッピングモール、シネマコンプレックス、大型商業施設など、建物用途が複合化したエリアの一角に建っている。
この超高層マンションだけでも、644世帯と人口密度が高いのに、周辺の複合施設を合わせると、昼間の人口は、さらに増加する。
震災時に、これらの避難者を敷地内に収容することは、ほとんど不可能だ。道路を挟んで南側にある公園の敷地を含めても、収容能力には限りがある。
以上のように、近い将来起こるであろう大震災時のことを考えると、危機管理体制の整っていない多くの高層マンションは、とても危険な状態にあるといえる。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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