国交省はできないで理由を並び立てて、「現時点では試験飛行を行うことは難しい状況」としている(FAQ冊子v4.1「4. 新飛行経路による影響」より)。
ところが昨年12月26日、川崎市上空で試験飛行が実施されていた。
「なんだ、やればできるじゃないか」と思って、その内容をよく調べてみると、実は国交省の実績作りの一環だったのではないのか、という話。
- 国交省・川崎市が殿町地区で飛行機の騒音測定(tvk NEWS)
- 川崎市はホームページで事前周知していた!
- 「Flightradar24」サイトで試験飛行を確認
- 小型機による試験飛行は説得力あるか
- 【追記】小型機の試験飛行の顛末
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国交省・川崎市が殿町地区で飛行機の騒音測定(tvk NEWS)
国交省と川崎市は12月26日、羽田新飛行ルートのうちB滑走路から川崎市南部上空を飛行する経路の試験飛行を実施した。
国交省・川崎市が殿町地区で飛行機の騒音測定
国土交通省は26日、羽田空港の国際線増便に向けて想定している新たな飛行ルートで試験飛行を行い、その上空を通過する川崎市では騒音の測定が行われました。
(中略)現在、Bの滑走路から川崎市南部の臨海部上空を飛行する新しい経路が想定されています。この地域は、多摩川を挟んで羽田空港に面していて、飛行機の騒音問題が度々指摘されてきました。26日の試験飛行で小型ジェットが通過した川崎市南部の臨海部には国土交通省と川崎市の職員が騒音の測定を行いました。
川崎市は来年夏にも予定される試験飛行で再度騒音を測定し集計したデータを地域住民に説明するとしています。
(tvkNEWS(テレビ神奈川)12月26日)
tvk (テレビ神奈川)がプロデュースする動画サイト「Channel OPEN YOKOHAMA」に掲載されてただけなので、試験飛行が実施された事実を知る人は多くないだろう(この動画すでに削除されていて、視聴できない)。
川崎市はホームページで事前周知していた!
試験飛行が実施されることは、川崎市民には事前に知らされていたのか?
じつは川崎市が12月18日にホームページにアップした「国土交通省所有航空機による大師地区の航空機騒音体感について 」に「飛行予定」が掲載されている(※リンク切れ19年1月3日現在)。
国交省所有の飛行検査機を活用して12月26日に2回、新飛行ルート(B滑走路の出発経路)と同じルートで飛行させる計画となっている。
概要
国(国土交通省)では、飛行経路見直し等による羽田空港の国際線の増便の実現に向けて、住民説明会や広報誌などで情報提供を行っているところですが、この度、国土交通省所有の航空機(飛行検査機)により、現在想定している大師地区上空の新飛行経路(B滑走路の出発経路)を飛行するとの情報提供がありました。
これは、B滑走路の無線施設(千葉方面からの着陸)の検査を行う目的で飛行している飛行検査機を活用して、B滑走路に着陸せず滑走路上空を通過して大師地区上空に向けてB滑走路からの離陸と同じ経路を飛行することで航空機騒音の参考にしていただこうというものです。
飛行検査機は、現在の羽田空港に就航している小型機(E170)と同程度の騒音値となっており、川崎市としても航空機の音の目安の一つになるものと考えておりますので、ご体感いただきますよう、お知らせ致します。
<飛行予定>1 日時
- 平成29年12月26日(火)7:00~8:00
予備日:27日(水)※当日の天候により、予備日に延期となることがございます。2 飛行概要
- 国土交通省所有航空機が、大師地区上空で想定している新飛行経路(羽田空港B滑走路~キングスカイフロント~小島町~夜光)を2回飛行します。
※騒音値については、現在羽田空港で就航中の小型機と同程度です。3 その他
- 国は、5箇所(小島新田駅、殿町第2公園、下河原公園、殿町3丁目路上、日ノ出公園)で騒音状況を確認します。
「Flightradar24」サイトで試験飛行を確認
実際にどのような試験飛行が実施されたのか?
「Flightradar24」(スウェーデンの航空ファンが構築した、飛行中の民間航空機の現在位置をリアルタイムに表示しているウェブサイト)に記録されている試験当日の飛行データをひも解いてみた。
12月26日の午前7時台に2回(7時10分頃と7時35分頃)、たしかに新飛行経路(羽田空港B滑走路~キングスカイフロント~小島町~夜光)を通過していたことが分かる(次図)。
次図は1回目に川崎区夜光2丁目上空1900ft(579m) を飛行している様子。
小型機による試験飛行は説得力あるか
試験飛行に使用された機は、「国土交通省所有の航空機(飛行検査機)」とされている。国交省が所有している飛行検査機は3機種6機(飛行検査|国土交通省航空局より)。
Flightradar24の記録によれば、当日飛行した機種はセスナ社製のセスナ サイテーション(Cessna 525C CitationJet CJ4)であったことが確認できる。
全長(16.3m)だからかなり小さい。大型機のボーイング777-300(全長73.9m)と比べると、その小ささがよく分かる(写真)。
上:Markus Eigenheer氏撮影(CC BY-SA 2.0)
下:Lasse Fuss氏撮影(CC BY-SA 3.0)
Flightradar24の記録によれば、1回目と2回目で、飛行高度が若干異なる(次図)。
※横軸は、UTC(協定世界時)。9を足すと日本の時刻になる
新飛行経路(羽田空港B滑走路~キングスカイフロント~小島町~夜光)の高度は、次のとおりだ。
- 1回目:600ft(183m)⇒1,900ft(579m)
- 2回目:1,225ft(373m)
このとき地上での騒音はどれくらいあったのか?
国交省のFAQ冊子v4.1「4. 新飛行経路による影響」(P49)に、小型機と大型機の離陸時の高度2,000ft(610m)の経路直下の最大騒音レベルが掲載されている。
- 小型機(737-800):78 L_Amax[dB]
- 大型機(777-300):82 L_Amax[dB]
今回2回の試験飛行よりも飛行高度が高い場合のデータなので、実際の値はもう少し大きかったのではないか。実際の値については、国交省・川崎市の報告を待つとして――
大型機と大型機の差4dB(=82-78)。人の聴覚は3dBの差を2倍の音の大きさに感じるので、この違いは無視できない。
今年の夏にも予定される試験飛行で再度騒音を測定し、集計したデータを地域住民に説明するとされている。
小型機の試験飛行は国交省の実績作りにはなっても、住民を説得させる材料にはならないのではないか。
【追記】小型機の試験飛行の顛末
【18年6月6日】国交省に情報開示請求し、上述の試験飛行の騒音結果を入手。
飛行検査機(搭乗者数6人)なのに76dBを上回る騒音が降り注いでいたことが確認できた。
※詳細は、「羽田新飛行ル―ト|開示請求で「飛行検査機の騒音測定結果(最大値)」入手」参照。
【18年9月16日】テレビ神奈川のニュースでは「川崎市は来年夏(筆者注:18年夏)にも予定される試験飛行で再度騒音を測定し集計したデータを地域住民に説明する」と報じられていたが、何もないまま夏が過ぎてしまった。
※詳細は、「羽田新ルート|検査機活用の騒音測定第2弾中止?」参照。
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