不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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湾岸エリアのマンション事情|平成29年第1四半期

国土交通省は6月9日、全国主要都市の計100地区を対象に四半期ごとに実施している「主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)」を公表。

同レポートは比較的バイアスがかかっていない、マンションの市況を知り得る貴重な情報源のひとつ。

平成29年第1四半期(平成29年1月1日~平成29年4月1日)の佃、月島、豊洲、有明といった、湾岸エリアの新築分譲マンションの価格動向を中心に、鑑定評価員(不動産鑑定士)のコメントをピックアップしておこう。

ざっくり言うと、前回(平成28年第4四半期)からあまり変わっていない。


【東京圏地価】8割の地区が上昇

東京圏(43)では、前回と同様に上昇が 33 地区(前回 33)、横ばいが 10 地区(前回 10)となり、約8割の地区が上昇となった。 

【東京圏地価】8割の地区が上昇
「平成29年第1四半期 主要都市の高度利用地地価動向報告」を切り貼り

【湾岸エリア地価】佃・月島・豊洲は3期連続0%

上昇傾向が続いていた湾岸エリアの地価のうち、佃・月島・豊洲は3期連続で0%。

有明だけは「0%超~3%未満」の範囲で上昇を続けている。

【湾岸エリア地価】佃・月島・豊洲は3期連続0%


「平成29年第1四半期 主要都市の高度利用地地価動向報告」を切り貼り

 

それでは各地区の「鑑定評価員のコメント」を見てみよう。

【佃・月島】資産保有目的の富裕層による需要は減退

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建築工事費の上昇等を要因とした分譲価格の高騰を背景に資産保有目的の富裕層による需要は減退。

中古マンションの市況は、タワーマンション等の比較的高額物件の在庫が積み上がっている。

地価動向
  • 当地区は、銀座を中心とする都心への優れた接近性を備えるとともに、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強い地区である。
  • グレードの高いタワーマンションが供給され、マンション市況は好調に推移してきた。しかし、建築工事費の上昇等を要因とした分譲価格の高騰を背景に資産保有目的の富裕層による需要は減退している。
  • 中古マンションの市況は、タワーマンション等の比較的高額物件の在庫が積み上がっており、成約までの動きは鈍い状況にある。マンション素地については、デベロッパーの取得意欲はあるものの建築費の高止まりにより採算性の検証が引き続き厳格化しており、選別化が一層進んでいる。
  • こうした背景から当期の取引価格は引き続き横ばいとなり地価動向も横ばいとなっている。
将来地価動向
  • 地区内外で再開発や東京五輪関連施設の建築計画が多数あり、数年のうちにマンションの大量供給が見込まれている。
  • 国内外の不透明な経済情勢や供給過剰感が見られる現状を背景に中古マンションの在庫は増加しており、今後マンション需要が反転増加に転じる要因は見当たらず、マンション市況は引き続き概ね横ばい、経済情勢次第ではやや下落する可能性も否定できない
  • マンション素地については建築費の高止まりによりデベロッパーによる厳格な選別化が進みつつあり、こうした背景から引き続き将来の地価動向は横ばいと予想される。

【豊洲】豊洲市場移転延期、マンション価格への影響は限定的

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豊洲市場への移転や環状2号線開通の延期により、一部に不動産価格のピークアウトを懸念した売却の動きが見られるものの、マンション価格への影響は限定的。

地価動向
  • 東京五輪開催決定以降、当地区は強いマンション需要を反映して新築マンション分譲価格の上昇が続いたが、足元では価格上昇の動きが一段落している。
  • 中古マンション市場では、エリア内での買い換えに伴う物件の供給が目立つものの、需要者の購入意欲は底堅く、価格下落には至っていない
  • なお、豊洲市場への移転や環状2号線開通の延期により、一部に不動産価格のピークアウトを懸念した売却の動きが見られるものの、マンション価格への影響は限定的であり、当地区の不動産市場全体の価格下落要因とはなっていない
  • このような状況から、当地区の地価動向は引き続き横ばいで推移している。
将来地価動向
  • 当地区は、新築・中古マンションともに大量供給が続いたが、将来的には取引件数の減少が予想され る。
  • また、豊洲市場の移転時期が決まらず、移転そのものも不透明となっていることから、将来性を懸念してマンションや開発素地を取得した者による売却の動きが出てくることも考えられるが、当地区は利便性の高さから居住目的を中心とした需要が底堅いため、マンション分譲価格等は安定的な動向が見込まれ、当地区における将来の地価動向は横ばいと予想される。

【有明】マンション市況はやや停滞傾向

【有明】マンション市況はやや停滞傾向

新築物件の大量供給が相次いでいることや、販売価格が一次取得者の購入限度額に近づいたことにより、マンション市況はやや停滞傾向。

地価動向
  • 東京五輪の開催決定以降、当地区のマンション市場は取引件数・成約価格ともに上昇傾向が続いていたが、湾岸エリアにおいて新築物件の大量供給が相次いでいることや、販売価格が一次取得者の購入限度額に近づいたことにより、マンション市況はやや停滞傾向にある。
  • こうした傾向や建築費の高止まりを受け、デベロッパーの採算性検証は厳格化しているが、当地区は五輪関連施設の建築や国家戦略特区の指定を受けた大規模開発事業等が計画されるなど注目度が高く、開発素地の取得意欲は依然として強いことから、地価動向はやや上昇傾向で推移している。
将来地価動向
  • 湾岸エリアでは引き続き大型分譲マンションの竣工・開発が控えていることから、マンション市況の停滞傾向が続くことが予想される。
  • しかしながら、当地区は五輪関連施設の建築や地区計画によるまちづくりが進捗中であるほか、都心部と湾岸部を繋ぐ環状2号線の開通や銀座と有明を結ぶ地下鉄構想など、交通インフラの整備も見込まれており、将来の発展期待が高いエリアであるため、デベロッパーの開発素地取得意欲は強い状況が続き、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される。

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