医師歴50年の臨床医、志賀貢先生のご著書『臨終医のないしょ話』 (2017/7/12)を読了。
本書にも触れられていた、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の倒産問題を整理しておこう。
雲行きが怪しくなり始めた高齢者住宅の将来
「第五章 在宅か病院か? 幸せな臨終の選択」に、「雲行きが怪しくなり始めた高齢者住宅の将来」として、サ高住の倒産問題が提起されている。
中でも「サービス付き高齢者向け住宅」(「サ高住」と略す)が経済的負担が有料老人ホームなどと比べると少ない、ということもあり、多くの高齢者の期待を背負って、6年ぐらい前から国の肝いりで建築ラッシュが始まりました。
ところが、この「サ高住」の経営が最近怪しくなり始めました。(P207)
介護施設が倒産した場合の影響の深刻さが指摘されている。
もう一度申しますが、介護施設は絶対に倒産してはいけないのです。いや、国は補助金を出して民間に介護施設を推奨して事業を進めた以上は、最後まで高齢者を責任を持ってフォローしなければならないのです。
これからは、原因はいろいろとあるでしょうが、介護施殼の廃業や統廃合が盛んになり、そのたびに施設から追い出された高齢者たちは行き場を失い、下手をすれば命さえ縮めかねないことになります。 (P208-209)
サ高住、制度開始5年で廃業125か所(読売記事)
サ高住の倒産問題は、「NHK クローズアップ現代+」が17年3月16日、NHKの調査結果として「倒産263件」と報じている。
その後、読売新聞が17年7月12日、国交省が今年初めて実施した調査では、「倒産などで廃業した施設数が、2011~15年度の5年間で計125か所に上った」ことを報じている。
サービス付き高齢者向け住宅、制度開始5年で廃業125か所
介護を必要とする高齢者の住まいの受け皿として急増する賃貸住宅「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)のうち、倒産などで廃業した施設数が、2011~15年度の5年間で計125か所に上った。
国土交通省が今年初めて実施した調査で判明した。廃業数は増加傾向で、同省は「ある程度の 淘汰は仕方がないが、入居者保護のあり方も含め、対策を検討したい」としている。(以下略)
(読売新聞 7月12日)
「入居開始前に廃業」したのが17件(15年)
残念ながら、国交省のホームページには廃業125か所の情報は見当たらない。
ただ、(株)官庁通信社が運営している「介護のニュースサイト」に「国交省の公表資料をもとに作成」したとして、廃業125か所の内訳がデータが掲載されている。
同データを可視化したのが次のグラフ。
「入居開始前に廃業」したのが17件(15年)って、いったいどんな事業計画を描いていたのか。国交省はどうしてこんなズサンな組織に補助金を認めていたのか。
サ高住選びは命に直結するので、マンション選び以上に慎重にならざるを得ない。
本書の構成
サ高住の件は、第五章に記されている。
第一章 臨終から患者を救った奇跡の言葉
第二章 臨終が近い人に表れる「お迎え現象」
第三章 臨終を決定づける体の赤信号
第四章 孤独死から身を守るとっておきの方法
第五章 在宅か病院か? 幸せな臨終の選択
第六章 臨終における緩和ケアの役目
『臨終医のないしょ話』(2017/7/12)
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