豊洲地区に建っていないのに「豊洲〇〇」というマンション名はOKなのか?
業界のルールによれば、最寄り駅の名称であれば使えることになっている。
でも、豊洲駅が最寄り駅でないのに、「豊洲〇〇」というマンションがあるのではないか、という話。
- 豊洲でないのに「豊洲〇〇」というマンション名はOKか?
- 最寄り駅の名称であればOK(物件の名称の使用基準)
- 非豊洲地区の「豊洲」名称のマンションは8件
- マンション名の”表示偽装”が横行!?
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豊洲でないのに「豊洲〇〇」というマンション名はOKか?
豊洲人気にあやかろうと、「豊洲〇〇」という名称のマンション広告がある。
「都心へ自在にアクセスできる3駅4路線利用」が謳い文句。
「物件概要」に目を凝らすと、次のように3駅へのアクセス情報が表示されている。
- 豊洲駅から徒歩14分
- 木場駅から徒歩14分
- 越中島駅から徒歩15分
たしかに3駅への徒歩アクセスは可能だが、横断歩道での信号待ち時間などを加味すると、とても表示された時間では行き着くことができない。
さて、本日の論点は「駅徒歩時間」ではなく、「物件の名称」について。
この物件は塩浜地区の運河沿いに建つのだが、物件名称は「塩浜〇〇」ではなく、隣接地区の名称を冠した「豊洲〇〇」となっている。
消費者受けの良い隣接地区名称を冠した「豊洲〇〇」とすることは、許されるのか?
結論からいえば、許される。
なぜならば、この物件の最寄りの駅が豊洲駅だからだ。
最寄り駅の名称であればOK(物件の名称の使用基準)
業界の自主ルール「不動産の表示に関する公正競争規約」第19条に、「物件の名称の使用基準」として、「物件の最寄りの駅、停留場又は停留所の名称を用いることができる」と規定されている。
(物件の名称の使用基準)
第19条 物件の名称として地名等を用いる場合において、当該物件が所在する市区町村内の町若しくは字の名称又は地理上の名称を用いる場合を除いては、次の各号に定めるところによるものとする。
- (1)当該物件の所在地において、慣例として用いられている地名又は歴史上の地名がある場合は、当該地名を用いることができる。
- (2)当該物件の最寄りの駅、停留場又は停留所の名称を用いることができる。
- (3)当該物件が公園、庭園、旧跡その他の施設から直線距離で300メートル以内に所在している場合は、これらの施設の名称を用いることができる。
- (4)当該物件の面する街道その他の道路の名称(坂名を含む。)を用いることができる。
冒頭に記したように、この物件は3駅にアクセスできる。
絵にすると、こんな感じ。
3駅のうち、越中島駅の1.4kmに対して、木場駅と豊洲駅が1.3kmとほぼ同じ距離で「最寄駅」。
利用できる駅が2以上あって、物件までの距離がほぼ同じであるときは、どちらの駅名を用いてもいいことになっている(首都圏不動産公正取引協議会 公正競争規約研究会『不動産広告の実務と規制(11訂版)』160頁)。
したがって、消費者受けの良い隣接エリア名を冠した「豊洲〇〇」とすることができるのである。
非豊洲地区の「豊洲」名称のマンションは8件
では、物件名に「豊洲」を含めたマンションはどのくらいあるのか?
住まいサーフィンの「物件検索」ページで「豊洲」と入力すると、竣工済み物件を含め23件がヒットする(4月30日現在)。
豊洲地区が15件。非豊洲地区が8件(内訳は、枝川4件、塩浜3件、東雲1件)。
非豊洲地区の物件は全て、最寄り駅が豊洲なのか?(次図)。
マンション名に「豊洲」が含まれる物件の分布図
(↑ クリックするとグーグルマップが開く)
マンション名の”表示偽装”が横行!?
人気地区の名称をマンション名に取り入れることは、住民の満足感(優越感)を高める効果があるかもしれないが、どちらかといえば売主の販促都合であろう。
マンションに長く住み続ける住民にとっては、知り合いを呼ぶうえでも、宅配便の誤配防止のうえでも、マンション名は所在地の名称と一致させておいたほうがメリットが多いと思うのだが。
ブランド力のある地名でマンション名を偽装する販促ワザ。費用を掛けずに販売価格に下駄をはかせようという意図はないか?
3年ほど前に社会問題になった食品表示偽装事件。その後、ファミレスのガストでは「豚肉の生姜焼き和膳」を「豚肉の生姜だれ和膳」に、「ほうれん草のソティ」を「おつまみほうれん草」に、居酒屋の甘太郎では「鮮魚盛り」を「刺し身盛り」に変えた。外食業界では、メニューの表現を見直す動きが広がった。
マンション名称表示偽装。外食業界と違って、不動産業界では改善されるどころか、むしろ流行りつつあるのではないか。
※銀座編(どこまで「銀座」? マンションの名称の使用基準)に続く・・・・・・。