以前マスコミが盛んに取り上げていた「違法貸しルーム(あるいは脱法ハウス)」はその後どうなっているのか?
国交省が12月26日に公表した「違法貸しルームの是正指導等の状況について」をひも解いてみた。
その前に、そもそも違法貸しルームとは、どういうものなのか?
違法貸しルームとは
同発表資料に、「違法貸しルーム」の定義が次のように記されている。
「違法貸しルーム」とは、「事業者が入居者の募集を行い、自ら管理等する建築物の全部又は一部に複数の者を居住させる『貸しルーム』で、防火関係規定等の建築基準法に違反しているもの」をいう。
具体的には次図のようなイメージ。
多数の人が寝泊りなどをし実質的に居住していながら、各部屋の仕切りが燃えやすい材料でできている、窓がないなど建築基準法に違反している疑いのある建築物。
国土交通省HPより
是正指導にもかかわらず約1200件で変化なし(全国)
国交省の発表資料には調査結果の概要として全国の集計表が掲載されているのだが、説明文章がないので、「引き続き通報物件の調査及び違反物件の是正指導を徹底するよう特定行政庁に要請しています」といわれても、「何のこっちゃ?」である。
そこで過去の公表資料もひも解き、違法貸しルームの是正指導等の推移をグラフにしてみた(次図)。
国交省や自治体への違法貸しルーム疑いの新たな通報は少なく、約2千件で頭打ちとなっている。
年数が経過するにつれ「調査中」だった物件が「是正済み」物件と「是正指導中」物件に仕訳され、その結果「是正指導中」物件が漸増している。
「是正指導中」の物件は現在、1,200件。違法の疑いのある「調査中」の物件を含めるとまだ1,433件存在している。
23区内の違法貸しルーム件数 新宿区がダントツ
東京23区の違法貸しルームの件数(違法の疑いのある調査中を含む)は、新宿区(125件)がダントツに多い。
2位世田谷区(88件)、3位台東区(81件)と続く(次図)。
新宿区が多いのは容易に想像がつくが、2位に世田谷区が入ってるのは意外。
世田谷区では、通報が多いということなのか……。
新宿区では漸減するも、ほかの区では変化なし
念のため、23区の違法貸しルームの件数(違法の疑いのある調査中を含む)の推移を確認してみた(次図)。
さすがに新宿区の違法貸しルームは、3年ほど前から漸減している。
でも、世田谷区の違法貸しルームはこの3年間、86~88件とほとんど変化してい。ほかの区もほぼ同様だ。
違法貸しルーム問題について世間の関心が薄れ、役所はルーチンワークとして単に数字を報告しているだけということはないのか。
事件・事故が起こらないと役所は動かない……。