大阪市は12月19日、民泊条例の骨子案を発表。同案では営業日数や区域の制限は設けないとしている。
市では12月20日から来年1月10日まで、同案のパブリックコメントを受け付けている。
大阪市、民泊条例案骨子を発表(日経記事)
営業日数や区域の制限は設けない方針。民泊新法が定める以上の独自の規制を設けると、違法のまま営業する民泊施設が増える懸念があるとみているという。
民泊施設、近隣住民に事前説明を 大阪市が条例案骨子
大阪市は19日、民泊条例案の骨子を発表した。施設の運営者が近隣住民に対し、民泊施設として使用することを事前に説明するようルール化するのが柱。「近隣住民」の具体的な定義は今後、規則やガイドラインで定める方針だ。2018年2月議会での議決を目指す。
18年6月の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に伴って定める条例に「近隣への周知」を盛り込む。営業日数や区域の制限は設けない方針。民泊新法が定める以上の独自の規制を設けると、申請せず、違法のまま営業する民泊施設が増える懸念があるとみている。(以下略)(日経新聞 12月13日)
民泊条例案骨子の中身
大阪市が公表した民泊条例の骨子案は、 「大阪市の住宅宿泊事業に関する考え方について」(PDF:491KB)から読み取ることができる。
条例制定の目的は、快適な生活環境確保と観光客との交流
条例制定の目的として、市民の快適な生活環境の確保だけでなく、観光客と市民との交流促進も掲げられている。
1 目 的
(前略)本市としても「違法民泊」事業者への指導を強化しているところです。このため、本市として必要なルールを定め、住宅宿泊事業の適正な運営を推進し、現に急増している「違法民泊」を「適法民泊」へ積極的に誘導することにより、市民の快適な生活環境及び宿泊客の安全・安心を確保するとともに、国内外から大阪を訪れる観光客と市民との交流を促進し、さらなる都市魅力の向上をめざしてまいります。
条例による区域・期間の上乗せ規制なし
まずは民泊条例が守られることが重要であるとして、区域と期間の制限はしないとしている(条例による上乗せ規制はしないという意味)。
本市では、区域と期間の制限は行いません
市内にある1万室を超える民泊施設の大半が「違法民泊」である現状を踏まえ、まずは住宅宿泊事業法及び今回策定する条例(「(仮称)大阪市住宅宿泊事業に関する条例」)で定めるルールを遵守いただくことが重要と考えます。「適法民泊」への誘導を積極的に推進することにより、市民の快適な生活環境及び宿泊客の安全・安心を確保してまいります。
なお、「住宅宿泊事業の届出と特区民泊の認定申請を重複して行うことは認めない」としている。
民泊条例の施行までの日程
パブコメを経て、来年3月に施行することで進められる。
- 17年11月~12月
市のルール案検討・策定 - 17年12月~18年1月
パブコメ募集⇒結果公表 - 18年1月
民泊条例案策定 - 18年2月
定例会に条例案提出・議決 - 18年3月
民泊条例案公布⇒事業者届出受付開始
大阪市の民泊条例案骨子の的外れ
大阪市で特区民泊事業の受付が始まったのは昨年の10月31日。その後17年1月1日に特区民泊条例が改正され、日数要件が「6泊7日以上」から「2泊3日以上」に緩和された。
日数要件が緩和されて1年近くが経つのに、大阪市がこれまでに認定した「特区民泊施設」は366施設(17年11月30日現在)。大手民泊仲介サイトAirbnbの市内登録件数の伸びが鈍化したとはいえ、1万2,500件あまりもあるのとは対照的だ(次図)。
民泊条例案骨子で営業日数や区域の上乗せ規制をしない理由として、「民泊新法が定める以上の独自の規制を設けると、申請せず、違法のまま営業する民泊施設が増える懸念がある」(冒頭の日経記事より)は、的外れではないのか。
大阪市民泊条例で検討すべき事項は、対象区域や営業日数よりも、罰則規定の強化ではないのか。
大阪市内では中国版Airbnbの登録件数が本家Airbnbの3割を超えているるのである(【対Airbnb】大阪で中国版Airbnb登録件数32%)。