不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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港区長の答弁にみる、民泊条例の検討状況

来年6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)に向けて、東京23区では、次の5つの区で民泊条例の骨子案などが示されている。

23区でAirbnbの登録件数が5番目に多い港区(約1,300件、12月1日現在)では、民泊条例の検討はどの程度進んでいるのか?

ヒントは、港区議会の武井雅昭区長(4期)の答弁にある。
第4回定例会のうち、11月29日~30日に開催された本会議(一般質問)で、3人の区議の民泊関連質問に区長が答弁しているのだ。港区議会インターネット中継(録画)をもとに、全文テキスト化しておいた。

結論を先に言えば、まだ基本方針は固まっておらず、民泊営業できる区域と期間を制限する必要性も含め検討中ということ。

※質疑応答の詳細を読む時間のない方は、最後の「まとめ」をお読みください。


質疑応答のポイント

近藤まさ子議員(公明)

近藤まさ子議員

民泊の監督強化と地域特性を踏まえた観光振興の取り組みについてお伺いいたします。

 

民泊新法の概況説明
一般住宅の空き部屋を旅行者に有料で貸し出す民泊について、そのルールを定めた住宅宿泊事業法いわゆる民泊新法が本年6月の通常国会で成立し、平成30年6月に施行となります。

全国に約5万件あるとされる民泊物件はその大半が旅館業法にもとづかず、違法状態にあるとされています。新法の制定により民泊という新しい宿泊事業に法的根拠を与え、営業基準などを定めたことは、健全な民泊事業の普及を大きく後押しすることが期待されます。

注目すべきは新法論議の契機にもなった近隣住宅とのトラブル防止策を明示したことです。実際の民泊事業は住宅街の一軒家やアパートなどを利用することが多いことから、夜中まで大勢で騒いでいる、利用者がゴミ出しのルールを守らない、といった苦情が少なくありませんでした。

この点について新法は、業者に対して民泊施設とわかる標識の掲示や利用者へのマナーの徹底などを義務づけました。義務を怠った事業者は業務停止命令や事業廃止命令の対象となり、それでも従わない場合は最大で6か月以下の懲役か百万円以下の罰金が課せられます。

旅館業法に基づかない民泊については、これまで違法民泊の疑いがあるとの通報を受けても行政機関として調査することには限界がありましたが、旅館業法の改正により、報告徴収や立ち入り検査まで実施できるようになる見込みです。

新法では民泊を行っている事業者は監督する行政庁は原則都道府県知事ですが、特別区は東京都と協定を交わすことで都知事に代わって届出の受理を含む監督や条例制定事務を処理することができると規定されています。

質問1-1:違法民泊の調査・監督強化方針

違法民泊の取り締まりが実際には地域からの通報を契機に行われることが多い現状から、新法においても迅速に対応するためには、港区が監督者となるべきであり、法施行に向けて速やかに指導監督強化に向けた体制作りや周知啓発に取り組むべきと考えます。

そこで質問は、「住宅宿泊事業法施行を見据えて、無届出や新法の決まりを遵守しない違法な民泊の調査・監督強化に、区としてどのように取り組まれるのか」区長のお考えをお伺いいたします。

 

民泊と観光振興との関係について
他方で、訪日外国人客は年々増加し、受け皿となる宿泊施設の不足は深刻化しています。政府が目指す2020年までに4千万人の訪日客を受け入れられるかどうかは民泊事業の成否が大きな鍵を握るといっても過言ではありません。

民泊は訪日客にとって宿泊施設の空きが少ないことや料金の高さのために選択肢から外していた地域を訪れるきっかけとなります。また、民泊事業は安価な宿泊施設を用意することで連泊を可能とし、日本人の日常生活に近い環境を提供することによって、短期宿泊や大型宿泊施設では味わえない地域の魅力を訪日客に伝える役割が期待できます。

港区は現在、平日週末にかかわらず区内宿泊施設の稼働率が高いことに特徴があります。

また従前、港区において、近隣住民がトラブルを起こしていた民泊の多くは閑静な住宅街において家主不在で商業目的のみで貸し出されており、地域や住民同士のコミュニティとの共存の視点が欠けていたと思います。

民泊の普及で区内の小規模なユースホステルや旅館の廃業を防ぐための配慮はもちろん必要ですが、民泊の泊数や期間等の制限は民泊の特徴や利点が活かされる程度に抑制的であるべきです。

新法制定を契機に悪質な事業者を排除することは当然として、特に家主が居住する民泊については新たなオモテナシの手段となるように育て、観光振興につなげていく姿勢が重要なのではないでしょうか。
その方法の1つとして、多くの民泊事業者がAirbnbといったウェブサイトを通じて家主と宿泊者とのマッチングを行っている現状から当該サイト運営事業者に対して、利用者へのルールやマナーの徹底などの協力を働きかけることも考えられます。

質問1-2:観光振興の手段としての民泊取組方針
そこで質問は、「港区という地域特性を踏まえたうえで、観光振興の手段としての民泊に区としてどのように取り組まれるのか」区長お考えをお伺いいたします。

区長答弁1

武井区長

民泊新法施行を見据えた区の取り組みについてのお尋ねです。

回答1-1:区民の安全安心が確保されるよう適切に対応

まず民泊の調査・監督の強化の取り組みについてです。
住宅宿泊事業法では年間の宿泊上限日数や近隣からの苦情への迅速な対応、施設を明示する標識の掲示などが事業者に義務付けられるとともに、旅館業法の改正では無許可営業者に対する指導監督権限の強化が予定をされております。

区は事業者が法令を遵守し適正に住宅宿泊事業が運営されるよう調査・監督に係る体制を整備するとともに、区が住宅宿泊事業に係る届出・受付・監督などの事務を処理できるよう準備を進め、区民の安全安心が確保されるよう適切に対応して参ります。

回答1-2:観光振興や地域の活性化につなげていく
次に観光振興手段としての民泊のお尋ねです。
家主が同居する民泊では、外国人宿泊者は家主との交流を通じて通常の旅行ツアーでは経験できない日本の生活習慣や文化などを体験することができます。また受け入れる家主にとっても海外の多様な文化や慣習に触れる機会を持つことが期待できます。
国際性豊かで多彩な観光資源を有する港区の特性を踏まえ、民泊を区民と観光客の交流促進の場と捉えて観光振興や地域の活性化につなげてまいります

黒崎ゆういち議員(自民)

黒崎ゆういち議員

質問2:民泊条例の制定方針

来街者および宿泊者に対する地域の受入施設についての質問です。

6月16日に公布された住宅宿泊事業法の施行日を定める政令と住宅宿泊業の実施の制限に関する条例の基準等を定める政令が閣議決定され、住宅宿泊事業法は平成30年6月15日に施行されることになりました。

港区基本計画・実施計画』おいても「東京2020大会に向けて、過去最多となる外国人旅行者を受け入れるために、『やさしい日本語』を活用した情報発信やバリアフリー化などを進める一方、民泊などの新たな行政課題も生まれています」との記載があるなか、特別区が民泊に関連する条例を制定することができるようになりました。

一軒家と集合住宅などでは事情も異なり、条例がないままニーズにに押し流されて、なし崩し的に広まるこの状況に住民からは不満の声が上がっています。

来年6月の施行に向けて港区として本法律に対する条例の制定と方針を早急に決定する必要があると考えますが、民泊に対する区長の見解をお伺いいたします。 

区長答弁2

武井区長

回答2:基本的な考え方と対応方針について検討中

「民泊に関する条例制定等の方針について」のお尋ねです。
住宅宿泊事業については、国際交流や観光振興の促進に資することが期待される一方、騒音など生活環境への影響が懸念されます。住宅宿泊事業の適正な運営を確保するためには、条例の制定など、区が主体的に対応する必要があります。

区は現在、条例の制定などに向けまして、関係団体や学識経験者からご意見ご要望を伺い、住宅宿泊事業に関する区の基本的な考え方と対応方針について検討を進めております。区は住宅宿泊事業が国際性豊かな区の特性を踏まえつつ、区民の安全安心が確保されるよう、法の施行に向け適切に対応して参ります。

風見利男議員(共産)

風見利男議員 

質問3-1:民泊はホテル・旅館の建設が可能な地域に限定すべき

民泊についてです。
マンションの空室などを民泊施設として提供する民泊を事業として認める民泊新法が2017年6月9日に成立、2018年6月に施行となります。この法律は住宅を利用して宿泊させる事業を新たに認めるものです。

内容は住宅宿泊事業を都道府県知事への届出制とし、また不動産管理業者などが住宅宿泊事業者に代わって事業を行うことを認めています。さらに仲介業者による宿泊者との契約も認めています。旅館業法は衛生や安全確保などの基準に基づく許可制を取り、住宅での宿泊業は認めていません。

本法による住宅での宿泊業の解禁は安全確保の点から問題があり、宿泊者や周辺住民の安全を脅かしかねません。また全国で横行する違法な民泊の現状を追認するものです。

違法民泊は全国で5万件を超え、宿泊者と周辺住民とのトラブルを引き起こし、地域に住民が住めなくなる事態まで起きています。取り締まりの強化こそ必要です。

民泊新法では年間の民泊営業の上限を180日と定めていますが、上限日数の運用は各自治体が条例で短縮したり民泊営業可能なエリアを定めることができます。だから各自治体では条例化に向けて急ピッチに準備を進めています。

大田区は住環境を守るため、ホテル旅館の建設が可能な用途地域以外では実施できないよう条例化を検討しています。新宿区では住居専用地域について金曜正午から月曜正午まで民泊ができる内容です。世田谷区は住居専用地域での営業は土日のみとする方向です。京都市ではホテル旅館などの建設が制限される住居専用地域では観光の閑散期にあたる1月から2月のみとする方向性を確認したとのことです。

港区では経営企画部長を委員長に『港区民泊対応検討委員会』を設置し、鋭意検討を進めています

港区はいま、閑静な住宅地域への飲食店の進出で住環境に大きな被害を与えています。そのうえ民泊が進出するようなことになれば、さらなる環境の破壊が起きる危険性があります。

観光立国推進基本法の基本理念は「住んでよし、訪れてよし」です。港区もこの立場に立って住民と旅行者とのトラブルの原因の元を作らないため、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会と東京都ホテル旅館生活衛生協同業組合の連名で区長宛に提出された要望書にもある通り、「旅館・ホテルが建設できない地域での民泊は認めない。文教地域や学校周辺での民泊は認めない」との要望を活かし、先進の大田区を参考に条例化すべきです。

答弁を求めます。 

質問3-2:民泊禁止のマンション標準管理規約の周知徹底を

分譲マンションで民泊が増加していることから、国土交通省は「マンション管理規約の変更などで民泊禁止を決めてほしい」と標準管理規約をホームページで公表しています

港区では分譲マンションセミナーで民泊対策の講演を行いました。しかし参加者が少なく徹底されたとは言えません。区のホームページで国土交通省のホームページとリンクさせ、管理規約をどう改正すればいいのかが分かるようになっています。

このことを全ての分譲マンションに知らせることが必要です。なおかつ緊急を要します。周知徹底を図るべきです。答弁を求めます。

区長答弁3

武井区長

回答3-1:基本的な考え方と対応方針を策定する

民泊についてのお尋ねです。
まず民泊の実施可能な地域を限定することについてです。

住宅宿泊事業法では自治体は住宅宿泊事業を制限する区域と期間を条例で定めることができるとされております。区は現在条例の制定に向け、関係団体や学識経験者から住宅宿泊事業に関するご意見ご要望を伺っております

区の特性を踏まえながら区民の安全安心が確保されるよう、住宅宿泊事業の区域と期間を制限する必要性も含めた、住宅宿泊事業に関する基本的な考え方と対応方針を策定して参ります。

回答3-2:管理組合向けチラシを直接送付、管理会社にも説明
次に分譲マンションでの民泊禁止を定める管理規約の周知に関するお尋ねです。
これまで区は住宅宿泊事業法の成立を踏まえ、分譲マンションの管理組合を対象に民泊を制限するための標準管理規約を紹介するなど、管理規約の改正について、分譲マンションセミナーや区のホームページを利用し周知に努めて参りました。

今後は区のホームページや分譲マンションセミナーの開催に加え、管理組合の皆さん向けにわかりやすいチラシを作成し直接送付するとともに、分譲マンションの管理会社に対しても説明を行うなど様々な機会をとらえ積極的に周知をして参ります。

  まとめ

港区の民泊条例制定に向けた主な取組状況について、区長答弁をまとめると次のとおりである。 

端的にいえば、まだ基本方針が固まっておらず、民泊営業できる区域と期間を制限する必要性も含め検討中ということ。

  • 区は事業者が法令を遵守し適正に住宅宿泊事業が運営されるよう調査・監督に係る体制を整備する。

  • 国際性豊かで多彩な観光資源を有する港区の特性を踏まえ、民泊を区民と観光客の交流促進の場と捉えて観光振興や地域の活性化につなげていく。

  • 条例の制定に向けて、関係団体や学識経験者からの意見・要望を伺い、住宅宿泊事業に関する区の基本的な考え方と対応方針について検討中

  • 区の特性を踏まえながら区民の安全安心が確保されるよう、住宅宿泊事業の区域と期間を制限する必要性も含めた、住宅宿泊事業に関する基本的な考え方と対応方針を策定していく。 

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