湾岸の某エリアの大規模タワーマンションで、5つある評価指標のうち、なぜ「建物の長寿命化」だけが「☆」(一つ星)なのか?
当該物件の「建物の長寿命化」を例に、☆評価の具体的な意味を調べる方法を紹介した記事「マンション環境性能表示|☆評価の具体的な意味を調べる方法」にさまざまな反響があった。
大手の不動産会社が「建物の長寿命化」において、いくつ☆を獲得しているのか、網羅的に調べてみた。
「マンション環境性能表示」対象物件は約1千件
東京都環境局のマンション環境性能表示のHPに「公表されているマンション」は、全部で1,023件(17年7月2日現在)。
09年度基準の物件数(提出時期:10~12年度)が最も多い(次表)。
三井不動産Rだけが☆ひとつ物件の割合が高い
大手の不動産会社が「建物の長寿命化」で獲得している☆の数を、基準年度ごとに拾った集計結果を次表に示す。
「2009年度基準」以降、三井不動産レジデンシャルだけが、☆ひとつ物件の割合が高いのが目立つ。
「2014年度基準」では、住友・三菱・東急・野村・大京は☆ひとつ物件はゼロ(すべての物件が☆2つである)。三井不動産レジデンシャルの☆2つ物件は2割に留まっている。
なぜ、三井不動産だけが「建物の長寿命化」に関して、☆ひとつ止まりなのか・・・・・・。
「建物の長寿命化」は重要な評価項目のひとつ
「建物の長寿命化」は、「躯体の劣化対策」と「維持管理・更新・改修・用途変更の自由度」の2つの評価項目から構成されている。
それぞれ品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の「劣化対策等級」と「維持管理対策等級」に準拠している。
特に、「劣化対策等級」は地味ではあるが、維持管理(清掃、点検、補修)を容易にするために必要な対策が見込まれているか否かを判断できる重要な評価項目だ。
「劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2~3相当」に達していないと☆2つを獲得できない。
維持管理対策等級の2と3の違いは下記のとおりだ。
他の住戸専用部分に立ち入ることなく専用配管の維持管理ができるだけでは不十分。専有部分に立ち入らないと共用配管の維持管理ができないマンションは等級3を得られない。すなわち、☆2つが得られないのだ。
維持管理対策等級2
- 専用・共用配管の維持管理が躯体に影響を及ぼすことなく行える。また、専用配管については、他の住戸専用部分に立ち入ることなく維持管理が行える。
維持管理対策等級3
- 専用・共用配管の維持管理等が躯体等に影響を及ぼすことなく行える。また、専用配管については、他の住戸専用部分に、共用配管については、専用部分に立ち入ることなく維持管理が行える。
「マンション環境性能表示ガイドライン(第二版)」より