不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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新築マンションの改定前価格を表示せずに「新価格」を謳ってもいいのか?

幹線道路に北面する小規模マンションの広告。

「新価格」を謳いながら、旧価格を示さないことは許されるのか?

「新価格」を喧伝するマンション広告

物件概要

大手町駅直通16分、駅徒歩7分。総戸数28戸、7階建。平成29年7月下旬竣工(本チラシ掲載日の6カ月後)。

  • 第2期1次 本広告】販売戸数5戸、1LDK+S(44.63m2)~3LDK(74.75m2)。販売価格2,990万円~5,890万円。
  • 第2期2次 本広告】販売戸数1戸、1LDK+S(65.00m2)。販売価格4,390万円。

 

新聞半紙大のチラシのオモテ面のキャッチコピー。

新価格(第2期1次一部住戸価格改定)&新発表(第2期2次住戸)&新キャンペーン(総額500万円キャンペーン)

 

100万円×5組で総額500万円プレゼントの「新キャンペーン」は特に目新しいことでないのだが、「新価格(第2期1次一部住戸価格改定)」のほうはチョット引っかかる。

改定前の価格はいくらだったのか?

チラシの隅々まで見ても、どこにも改定前の価格は記されていない。

「新価格」を謳いながら、旧価格を示さないことは許されるのか?

結論を先にいえば、許される。

不動産公正取引協議会連合会 公正競争規約研究会『不動産広告の実務と規制 11訂版』P293のQAにその答えが記されている。

【質問】 「新価格〇〇万円」と表示したい

残戸数30戸のマンションを販売していますが、早く処分したいので。平均400万円値下げすることになりました。販売を開始してから約6か月を経過していますので、二重価格表示をすることができることは知っていますが、このマンションの既購入者との関係もあることなどから二重価格表示をしないで、値下げすることになった価格をもって「新価格 OO万円~△△万円」と表示してもよいでしょうか

 

旧価格を表示しないのであれば、「二重価格表示」に該当しないので問題ないという、門外漢からすれば何とも違和感のある回答となっている。

【回答】

販売を開始してから3か月以上経過している新築分譲住宅や新築分譲マンションについては、二重価格表示をすることは可能ですが、これを行わずに、値下げして実際に販売する価格の前に「新価格」という表示をすることも問題ありません
 二重価格表示とは、過去の販売価格を比較対照価格として新価格(値下げ価脩)を表示するものですが、ご質問の広告案は、旧価格を表示しないで値下げした価格を表示するものですから、二重価格表示に該当しません。広告案の「新価格」という表示に代えて、「改定価格」、「値下げ価格」、「プライスダウン」等と表示しても差し支えありません。(以下略)

 

新旧の価格を併記する「二重価格表示」は、厳しい規制がある。

でも、旧価格を表示ないのであれば、「二重価格表示」に該当しないので、「新価格」を表記してもいいというのだ。

また、「改定価格」や「値下げ価格」、「プライスダウン」というような表現でもOKだという。

この業界寄りとも思える回答によって、売り主は、消費者に具体的な値下げ額を知らせずに「新価格」を喧伝できるだけでなく、既購入者の反発を免れるという、一石二鳥の販促ワザを展開できる。

 

実際、いくら値下げされているのか?

本物件の前回のチラシ(16年12月2日)を調べてみると、次のように「第2期」の「販売戸数5戸」として、「3,290万円~5,890万円」で販売されていたことが分かる。

【第2期 本広告】販売戸数5戸、1LDK+S(44.63m2)~3LDK(74.75m2)。販売価格3,290万円~5,890万円。

つまり、この2か月間で1戸も売れていないことに加え、少なくとも1LDK+S(44.63m2)が30万円(=3,290万円-2,990万円)値下げされていたことが確認できる。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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