ビール大手4社とも1~9月期決算で増益を確保。
ただ、各社とも主力のビール事業は伸び悩み、飲料や食品、不動産など、ビール以外の事業が下支えしているという。
ビール4社、営業増益 1~9月期 不動産などの他事業が下支え
ビール大手4社の平成28年1~9月期連結決算が4日、出そろった。本業のもうけを示す営業利益はサントリーホールディングス(HD)、キリンHD、アサヒグループHD、サッポロHDの4社とも増益を確保した。
ただ、各社とも主力のビール事業は伸び悩んでおり、飲料や食品、不動産など他事業が下支えする傾向が鮮明となっている。(以下略)
(産経ニュース 11月5日)
EDINETで各社の有価証券報告書をひも解いてみると、興味深い事実が見えてくる。
まずは、ビール大手4社の売上高・営業利益の確認から。
ビール大手4社の売上高・営業利益の比較
ビール大手4社の売上高(15年12月期)は、1位サントリーHD(2.7兆円)、2位キリンHD(2.2兆円)、3位アサヒグループHD(1.9兆円)、4位サッポロHD(0.5兆円)の順(次図)。
※ビール大手4社は12月決算。
営業利益でみてみると、4社がかならずしもビール(酒類)で稼いでいるわけではないことが分かる(次図)。
サントリーHDは、「酒類」よりも「飲料・食品」の営業利益が大きい。
キリンHDは「医薬・バイオケミカル」が3本柱の一つになっている。
アサヒグループHDだけが酒類でシッカリ稼いでいる。
サッポロHDは、「国内酒類事業」と「不動産事業」がほぼ互角。
サッポロHDの収益構造をもう少し詳しく見ていこう。
サッポロHDのセグメント別の売上高・営業利益の推移
サッポロHDのセグメント別の売上高推移(次図)を見てみると、「国内酒類事業」が最も多く約2,700億円。
「不動産事業」は約200億円で、「国内酒類事業」の1割にも満たない。
ところが、営業利益額(次図)でみると、「国内酒類事業」の約90億円に対して、「不動産事業」は約80億円とほぼ互角。
営業利益率(次図)でみると、「不動産事業」は約40%と突出しているのだ。
サッポロHDの不動産事業とは?
サッポロHDで大きな営業利益を生み出している不動産事業とは何なのか?
サッポロビール工場跡地にある恵比寿ガーデンプレイスや恵比寿ファーストスクエア、銀座四丁目交差点にある恵比寿ファーストスクエアのことらしい。
不動産賃貸では、複合商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」において、恵比寿のランドマークとして「大人の街」となるべく、ブランド力強化と利便性向上を図るためのバリューアップを推進しています。
商業エリアでは、本年秋のリニューアルオープンに向け、5月から恵比寿ガーデンプレイスタワー展望レストラン街の改修工事を進めています。また、平成26年10月に開業した「恵比寿ファーストスクエア」は、高度な安全性・快適性・環境性能を備えた競争力のあるオフィスビルとしてお客様より高い評価をいただき、開業以来、満室稼働を維持しており、当期の収益拡大に本格的に貢献しています。
不動産開発では、銀座四丁目交差点の一角で進めている複合商業施設「GINZA PLACE(銀座プレイス)」が計画通り6月に竣工し、9月の開業に向け着々と準備を進めています。銀座の中心から世界に向けて様々な情報発信を行い、「明日の銀座を創るランドマーク」となることを目指しています。
(サッポロHD 第93期第93期 第2四半期)
朝日新聞が不動産屋だったと思ったら(不動産はペンよりも強し)、サッポロビールも不動産屋だったのである。
サッポロビールは、「麦とホップ」ではなく、土地によって「コクの頂点」を目指しているのか――。
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