年内に成立されると見られていた民泊新法の調整が遅れていることについては、すでに当ブログでも紹介した(臨時国会「民泊新法」提出見送り 二つの論点)。
民泊新法の臨時国会への提出が見送られた論点は主に二つ。
- 規制改革会議で決定された年間営業日数の上限「180日以下の範囲内」について、具体的な日数をどうするか
- 自治体が独自に条例で営業日数を決められる仕組みをどうするか
民泊新法の制定に向けた動き
まあ、利害関係者が多いから、調整に難航していることに想像は難くない。
地方議会では、相次いで民泊規制強化の意見書が議決されている(たとえば、民泊事業の規制強化!石川県も国に意見書)。
北九州市のように、民泊を推進しようとする自治体もあるが、少数派だ(北九州市の特区民泊は地方創生の起爆剤となるか?)。
全旅連(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会)は6月8日、都内で「無許可宿泊施設撲滅総決起集会」を開催し、民泊の営業日数上限を政府の方針である180日から30日に短縮するように主張している。
一方、ちんたい3団体(全国賃貸管理ビジネス協会、全国賃貸住宅経営者協会連合会、日本賃貸住宅管理協会)が民泊の規制緩和で激しいロビー活動を展開している。
ちんたい3団体の「民泊に関する要望書」
ちんたい3団体が9月14日付で、ちんたい議連の議員宛に出した「民泊に関する要望書」をひも解いてみよう。
民泊に関する要望書
1.民泊の意義・目的
- (1)民泊は急増する訪日外国人観光客と、日本人のビジネスパーソン・観光客がスムーズに宿泊できる宿所数を提供することが目的であり、2020年の観光客数4、000万人を実現するための切り札である。
- (2)民泊は住宅の空き家・空室を有効活用する新たなビジネスの創出を通じて住宅市場や地方の活性化に貢献できるものである。
2.民泊新法に求められるもの
- (1)民泊を効果的・効率的な制度として普及させるために、必要な最低限度の規制と簡素な運営の仕組が不可欠である。
- ◆営業日数の下限は年間180日とすること
- ◆民泊サービス事業者は「宅建業、旅館業、旅行業」の登録者とすること
- ◆条例での制限を行わないこと
民泊サービス事業者に、旅館業と旅行業を加えたのは、宅建業者をかまそうという目論見を目立たなくさせるためなのかどうかは、さておき――
注目すべきポイントは、営業日数として「下限は年間180日」を要望していることだ。
「年間提供日数の上限を「半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する」ことは、すでに6月2日に「規制改革実施計画」のなかで「民泊サービスにおける規制改革」として閣議決定されているのにである。
「規制改革実施計画(閣議決定 平成28年6月2日)」P23-24より
180日という「上限」を撤廃したいがために、「下限」180日を打ち出したのであろうが、これだと180日未満の民泊は違法になってしまうぞ(笑)
二つ目のポイントは、「条例での制限を行わないこと」を要望していることだ。
冒頭に記したように、地方議会では独自に条例を制定できるように、次々と意見書が議決されている。
ちんたい3団体はこの流れに、真向勝負を挑んでいる。
閣議決定された内容を、陳情でひっくり返すことは可能なのか?
ところで、いったん閣議決定された内容を、陳情でひっくり返すことは可能なのか?
手続き的には可能である。
閣議決定とは、政府としての統一見解。
法律として制定されるためには、国会の承認を得なくてはならないからだ。
自民党ちんたい支部連合会の党員3万人の力をもってすれば、「年間180日」のキャップを撤廃することは可能なのかもしれない。
民泊新法の制定プロセスから目が離せない。
あわせて読みたい