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3分でわかる!羽田新ルート問題

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する羽田新ルート計画。 羽田新ルート周辺の多くの住民が落下物・墜落事故の危険リスクや騒音などの影響を受けることになるのだが、このあたりの問題はあまり共有化されていないのではないか。

よくご存じない方のために「羽田新ルート問題」をザックリまとめておいた。

(※18年9月10日この記事を更新)


もくじ

落下物・墜落事故発生の可能性と騒音問題

羽田空港の国際線発着回数を増やすため、現在の4つの滑走路を利用し、これまでの離着陸コースに加え、新たに2つの着陸ルートと2つの離陸ルートが計画されている。着陸ルートは過密都市の上空を通過するので、落下物・墜落事故発生の可能性と騒音の問題が懸念されている。

ただ、落下物・墜落事故発生の可能性について、発生した場合には深刻な事態ではあるものの、あなたが巻き込まれる可能性は極めて低いことから気にしても仕方がないというのが筆者の理解。むしろ問題なのは、広範囲にわたる騒音の影響だ。新ルート周辺の住民は避けようがないからだ。

新ルートのうち、離陸ルートについては、羽田空港近辺の住民以外はあまり気にしなくてもいいだろう。南風時にB滑走路から飛び立つ旅客機は海に向かうし、北風時にC滑走路から飛び立つ旅客機は都心上空を北進するが羽田から飛び立った後すぐに高度4,000ft(1,220m)に達するからだ(次図)。

離陸ルート
FAQ冊子v4.1(P85)にピンク色の楕円を追記

 

問題となるのは着陸ルート。着陸ルートのほうは、徐々に高度を下げてくるので騒音の影響が免れない。具体的には次図に示す「A滑走路到着ルート」と「C滑走路到着ルート」だ。

f:id:flats:20180910062131j:plain
FAQ冊子v4.1(P85)にルート名と旅客機イラストを追記

騒音の影響(ルート・時間帯・頻度)

新ルートは、「義務教育の時間や夜間にお休みになる時間帯を踏まえ(「⽻⽥空港のこれから」P33)」、南風時の15時から19時の時間帯のうちの3時間運用される。

A滑走路到着ルートでは1時間当たり14回(4分17秒ごと)の頻度で、C滑走路到着ルートでは1時間当たり、30回(2分ごと)の頻度で上空から騒音が降り注ぐ(次図)。

騒音の影響(ルート・時間帯・頻度)
FAQ冊子v4.1(P25)

両ルートの直下および周辺地域の騒音レベルは、たとえば、目黒駅の上空450mを大型機が通過(A滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは約76dB。広尾駅の上空600mを大型機が通過(C滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは約72dB(次図)。

ルートの直下および周辺地域の騒音レベル
※詳しくは、「「新飛行ルート問題」飛行ルート周辺の騒音マップを描いてみた」参照。 

不動産価値への影響は?

国交省は新ルートによる不動産価値への影響について、「直接的な因果関係を⾒出すことは難しい」との見解を示している(次図)。

不動産価値への影響
FAQ冊子v4.1(P56)

 

国交省としては、そのように回答せざるを得ないのだろう。ただ、新ルートの直下になる大田区や品川区、港区のマンションを避けたいと考える人は出てくるだろうから、不動産への価格への影響は避けられないのではないのか。

現状ではまだ「羽田新ルート問題」が世間の共通認識になっていないので、不動産価格への影響は観測されていないようだ。

騒音影響を受ける区民は100万人超

筆者の独自調査によれば、23区のうち羽田新ルート直下から水平距離500m範囲の人口は約109万人。23区の総人口927万人の12%が騒音の影響を受けることが推定される(次表)。

都内で騒音被害などの影響を受ける住民の数・割合
騒音影響を受ける区民100万人超」より

影響を受ける人口割合が大きいのは渋谷区54%(12万人)と中野区53%(18万人)。次いで、品川区31%(12万人)、港区30%(7万人)、板橋区30%(17万人)、練馬区30%(21万人)。

羽田新ルート|騒音影響を受ける区民100万人超
「同上」より

羽田新ルート直下の地域かどうか、簡単に知る方法

羽田新ルートが通過する具体的な地域名(23区の町丁目)を知るには、「羽田新ルートが通過する地域名(23区の町丁目)」参照。

(↓ 渋谷区の例)

羽田新ルートが通過する地域名(23区の町丁目)


また、あなたがお住まいの場所が羽田新飛行ルート直下にあるのかどうか知るにはグーグルマップを活用した「【保存版】羽田新飛行ルート直下の地域かどうか、簡単に知る方法」参照(次図)。

【保存版】羽田新飛行ルート直下の地域かどうか、簡単に知る方法

国交省(政府)は情報周知に後ろ向き!?

羽田新ルートの設定が予定されている区の多くでは、区議会が国に対して「教室型」(多数の意見交換による問題意識の共有化ができる)の説明会の実施を求めている。しかしながら、国交省は「オープンハウス型」(ふらっと来た人も「来場者」としてカウントできる)の説明会を中心に進めている。

これまでに開催された住民説明会は2年7か月(15年7月から18年2月)で延べ127日間・66会場、約1万6,800名が参加(内訳は次図)。

住民説明会の来場者数実績 (東京都、神奈川県、埼玉県の合計)
羽田新飛行ルート|地域住民の関心は高まって…」より

第3・第4フェーズは第1・第2フェーズと比べて開催延べ日数が約3分の1(=16日÷47日)と少なく、来場者数は大幅に減ったものの、逆に1日当たりの平均来場者数は増えている。国交省は地域住民の関心の高まりを抑制するかのように、開催延べ日数を減らしているようにも見えてしまうのだが……。

羽田新ルート周辺の100万人を超える区民の生活環境を脅かしてまで実施する大義はあるのか? なぜ羽田増便は必要なのか? 羽田増便計画策定に至る経緯については、「羽田増便計画策定に至る経緯とは 」参照。

あわせて読みたい

「羽田新ルート問題」の最新記事については、下記参照。

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