みずほ総合研究所が8月26日に発表したみずほリポート「訪日外国人4,000万人時代の宿泊施設不足~日本人の需要減少にもかかわらず、4.4万室が不足」(PDF 836KB)が興味深い。
「みずほリポート」のサマリー
2020年の訪日外国人4千万人の政府目標は射程圏内であることを検証したうえで、3つのシナリオ(標準、上振れ、下振れ/分散)による試算結果が記されている。
- パネルデータを用いた需要関数の推計結果からは、2020年に訪日外国人数を4,000万人とする政府目標は射程圏内であること、中国人訪日客が全体の4割を占めるようになることが予想される
- 標準的なシナリオでは、日本人の減少分を外国人が補うため、2020年の宿泊需要は2015年比1割程度増加する。2015年の稼働可能客室数に対し、東京・大阪を中心に4.4万室が不足する計算
- 不足客室数は、宿泊需要が日本人・外国人とも上振れるシナリオでは8.6万室、日本人が下振れし外国人の分散が進むケースでは2.6万室となる
- いずれのシナリオにおいても地方の延べ宿泊者数シェアは低下する。また、現在の供給計画を反映すると、供給不足に陥るのは大阪を中心とするごく一部の地域にとどまる
各シナリオの内訳は次表のとおりだ。
「みずほリポート」P3より
2020年における宿泊室数の需給バランス
現時点で判明しているホテルの供給計画を見込んだ、2020年における宿泊室数の需給バランスは、次表の通りである。
※シナリオ1:標準、シナリオ5:上振れ、シナリオ9:下振れ(外国人の場合は分散)
「みずほリポート」P13より
上図を筆者なりに、もう少し分かりやすく可視化したのが次図。
- 「標準シナリオ」の場合、東京で4千室、大阪で9千800室不足する。
- 「上振れシナリオ」の場合、東京で1万9,900室、大阪で1万8,600室不足する。
- 「下振れ/分散シナリオ」の場合、東京で7,500室余るが、大阪で7,200室不足する。
不足する客室数を民泊で補完するとすれば・・・
「標準シナリオ」の場合、東京で4千室、大阪で9千800室不足する。
この試算結果は、簡単にいえば次式で計算されている。
- (2020年の客室需要)-(2020年までのホテルの供給計画を見込んだ客室数)
計算式のうえでは民泊が一切見込まれていないように見えるが、現在の民泊による室数は折り込み済みであることが前提と考えられる。
現在Airbnbに登録されている物件数は、東京で約1万4千件、大阪で1万件(次表)。
訪日外国人の宿泊先を地方に分散できなければ、現在Airbnbに登録されている物件数に対して、「標準シナリオ」の場合、2020年時点で、東京であと3割、大阪であと同数増えなければ(つまり現在の2倍の民泊が必要)宿泊施設数不足は解消されない勘定になる(次図)。
ちなみに、「上振れシナリオ」の場合には、2010年時点で、東京であと1.4倍、大阪であと1.9倍増えなければ宿泊施設数不足は解消されない(次図)。
「下振れ/分散シナリオ」の場合には、2010年時点で、東京では供給過剰になるが、大阪ではあと7割増えなければ宿泊施設数不足は解消されない(次図)。
以上を踏まえると、2020年に向けた重点課題はつぎの2つ。
- 訪日外国人の宿泊先を東京・大阪から地方に分散させること
- 特に大阪の宿泊室数を確保すること(民泊対応を含む)
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