東京都は8月25日、「豊かな住生活の実現と持続に向けて(東京都住宅政策審議会 答申素案)」のパブコメの募集を開始した(締め切り9月8日日)。
同答申案は、前舛添知事が2年前(2014年7月9日)に東京都住宅政策審議会(会長:小林秀樹千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻教授)に対して、「人口減少社会に向かう中、豊かな住生活実現のための住宅政策の新たな展開について」諮問していた事項に対する回答。
答申素案は次の5章から構成される。全51頁。
- Ⅰ 人口減少社会を見据えた住宅政策の基本的考え方
- Ⅱ 目指すべき「8つの目標」
- Ⅲ 目標実現に向けた 「3つの着眼点 」
- Ⅳ 具体的な施策の方向
- Ⅴ 立地に応じた施策の在り方
マンションに係る部分を中心に、ピックアップしておこう。
5つ目の目標は「安全で良質なマンションストックの形成」
「Ⅱ 目指すべき「8つの目標」 」のなかで、5つ目の目標として、「安全で良質なマンションストックの形成」が掲げられている(P7)。
- マンションの管理組合が、専門家などの支援を受けながら、適正な維持管理や必要な改修工事、建替え等の再生に自主的に取り組み、マンションストック全体の良質化・長寿命化が進んでいる。
- 消費者のマンション管理に対する意識や関心が高まるとともに、管理に関する情報の開示が進み、管理が良好なマンションが市場で高く評価されている。
「安全で良質なマンションストックの形成」を実現するための2つのべき論
さらに、「安全で良質なマンションストックの形成」を実現するための「Ⅳ 具体的な施策の方向」として、2つのべき論が掲げられている。
一つ目は、「良質なマンションストックの形成促進計画」に基づいた、適正管理と再生の促進。
「良質なマンションストックの形成促進計画」(平成 28(2016)年3月)に基づきながら、マンションの適正な管理の促進と老朽マンション等の 再生の 促進に向け て総合 的に施策を 推進し ていくべきである。(P25)
※「良質なマンションストックの形成促進計画」については、「都が認識している「超高層マンション増加問題」「民泊問題」」をご参照。
二つ目は、超高層、居住以外の所有・利用、空き住戸等への対応
超高層マンションや、居住以外の目的でのマンションの所有・利用、マンションにおける空き住戸などの状況について、実態や管理に関する課題を把握し、実情に応じ、対応策を検討すべきである。 (P26)
超高層マンションの問題や居住以外の所有・利用について、「対応策を検討すべき」という入り口論にとどまっている。
なぜ、「民泊」という言葉を使わず、「居住以外の所有・利用」などという曖昧な表現を用いているのか?
全51頁からなる答申素案文書には「民泊」の文字が見当たらない。
超高層マンションなどの新規開発:規制や誘導の在り方等について検討を進める
「Ⅴ 立地に応じた施策の在り方 」のなかで、「今後の在り方を検討すべき施策」のひとつとして、超高層マンションなどの新規開発について次のように言及されている。
新たに大量の住宅を生み出し、都市の景観や地域の生活環境にも大きな影響を与える超高層マンションなどの新規開発については、都市づくりの観点も含め、規制や誘導の在り方等について検討を進めることが必要である。(P40)
超高層マンション<など>の・・・規制や誘導の在り方<等>・・・
<など>には、タワーマンションが含まれているということなのか?
<等>は、「規制や誘導の在り方」以外にも検討を進めるべき事項があり得るという役所用法なのか?
なぜ、平仮名(など)と漢字(等)を使い分けたのか?(単に推敲不足なだけなのか?)
など等、気になるところが多数ある答申素案文章なのだが――、現在無秩序に開発され続けている超高層マンションにメスを入れよという提案はよし。
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