民泊の問題が世間に広く浸透していないのは、マスコミが「安易な両論併記的な報道」をしている点と「キーワードを上手く捉えていない」点にもあるのではないか、というのが本日の問題提起。
ざっくり言うと
安易な両論併記的な報道により、民泊問題を適切に伝えられていないのでは
「宿泊した訪日外国人がゴミ出しで迷惑をかけているのはケシカラン」というマンション住人の民泊に対する否定的な声を伝える一方で、「自宅に訪日外国人を迎え入れて、日本人のリアルな住生活を知ってもらうことができた」という民泊に対する肯定的な声を伝える。
放送用周波数という限られた資源を独占的に使用できるテレビ局は、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること(放送法第4条1項4号)」が義務付けられているので仕方がないのかもしれないが、安易な両論併記報道によってことの本質が適切に伝えられていないのではないのか。
ただ、都知事選では候補者21名を平等に報じないで、主要候補者3名(小池・増田・鳥越)を中心に報じているのはナゼか?
放送法第4条1項2号(政治的に公平であること)に反していないのか?
都知事選で候補者21名の動静を平等に伝えないのに(まあ、このことに反対する人は多くはないとは思うが)、民泊については、否定的な意見と肯定的な意見を平等に扱っている。
平等に扱っているというよりも、「ゴミ捨てはケシカラン」vs「日本人のリアルな住生活知ってもらえる」といったように、問題をあまりにも単純化して伝えているようなところが気になるのである。
特にテレビでは、絵になりやすい事象を中心に伝えるあまり、民泊問題の捉え方が表層的になっていないだろうか。
都市部では、ホームステイ型の民泊の割合は少ないにも拘らず(後述)、投資型民泊と同等に扱うのは、都知事選の泡沫候補者の報道に時間を割くようなものではないのか。
あるいは民泊を推進したい官邸サイドの意向を忖度した結果なのか――。
民泊問題のキーワードは「ホームステイ型」「投資型」
6月20日に公表された 「『民泊サービス』の制度設計のあり方について(最終報告書)」は、民泊問題の論点がよく整理されているのだが、いかんせん一般の人には分かりにくい。
マスコミが分かりやすく伝えているのか気になるところである。
同報告書では、「家主居住型」と「家主不在型」に区別して、規制を課すことになっているのだが、これらの呼称が取っ付きにくい。
家主が居るか居ないかといった物理的な表現ではなく、訪日外国人との交流を重視する(ホームステイ型)のか、金儲けを重視する(投資型)のかといった目的的に表現してはどうか。
「ホームステイ型」「投資型」としたほうが一般に人には馴染みやすいし、民泊問題の本質をよく表しているように思う。
- 【投資型民泊】投資目的で購入あるいは借り上げたマンション・一軒家を旅行者に貸し出す民泊
- 【ホームステイ型民泊】自宅の一部を開放し、旅行者とのコミュニケーションを図ることを重視した民泊
マスコミは都市部の「ホームステイ型」の民泊を針小棒大に報じていないか?
現在、多くの問題が噴出してきているのは、主に都市部でのマンションにおける民泊である。
全国でAirbnbに登録されている物件数の分布を見ると(次図)、東京・大阪・京都が全体の4分の3を占め、建物種類別ではマンションが全体の7割を占めている。
民泊問題は都市部のマンションとそれ以外(地方のマンション・一軒家)に分けて議論する必要があると思う。
「投資型」と「ホームステイ型」はどのくらいの割合なのか?
昨年10月、大田区の民泊を対象に筆者が行った独自調査によれば、投資型が7割、ホームステイ型が2割、不明が1割であった(次図)。
大田区という土地柄を勘案すると、新宿区や渋谷区では投資型の民泊の割合がもっと高いことが予想されるが、残念ながらこのことが分かる統計データは存在しない。
都市部におけるホームステイ型の民泊の件数は少ない。
「自宅に訪日外国人を迎え入れて、日本人のリアルな住生活を知ってもらうことができた」というホームステイ型民泊の声も伝えるマスコミ。
マスコミは都市部の「ホームステイ型」の民泊を針小棒大に報じていないか・・・・・・。
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(本日、マンション広告なし)