大阪府警は4月26日、違法民泊の初の摘発を実施。
- 大阪府警は違法民泊の初の摘発を実施
- 伏線
- 生野区のAirbnb登録件数は大阪市24区のうちでは少ないほうなのだが・・・
- 大阪市内では、1人でもっと多数の民泊を運営しているホストがいるのだが・・・
- 生野区の外国人人口の割合は2割!
- 府警の摘発には一罰百戒効果はある、ただし納得感のある説明がほしい
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大阪府警は違法民泊の初の摘発を実施
今回摘発されたのは2件。いずれも生野区の外国籍。
1件は71歳の韓国籍の女性(以下、老女)で、マンションなど3カ所で約450組から約840万円(13か月間)を売り上げている。
もう1件はレンタルビデオ店を経営している韓国籍の夫と中国籍の妻(以下、レンタルビデオ店夫婦)で、一戸建ての自宅など2カ所で約300組から約450万円(9か月間)を売り上げている。
民泊を無許可で営業、容疑の女ら3人を書類送検 大阪
外国人観光客向けにマンションなどで無許可の「民泊」を営んだとして、大阪府警は26日、いずれも大阪市生野区の韓国籍の飲食業の女(71)、中国籍のレンタルビデオ店経営の夫(37)と韓国籍の妻(55)を、旅館業法違反(無許可営業)の疑いで書類送検し、発表した。
(中略)
外事課によると、女は昨年1月~今年2月に自ら借りた生野区のマンションなど3カ所で、夫婦は昨年6月~今年2月に一戸建ての自宅など2カ所で、大阪市から旅館業の許可を受けずに韓国人観光客らを有料で宿泊させた疑いがある。
いずれも主にインターネットの民泊サイトで予約を受け付け、1人2千~3千円で宿泊させたという。府警は、女は約450組から約840万円、夫婦は約300組から約450万円を売り上げたとみている。(朝日新聞デジタル 4月26日)
伏線
昨年の11月4日の京都府警に続き(京都府警が悪質な民泊を摘発!京都市Airbnb登録件数の増加にブレーキは掛かるか?)、大阪府警もようやく違法民泊の摘発に踏み切ったか、という感じ。
今回の大阪府が摘発に踏み切ったのには、伏線があったように思う。
3月26日の産経記事「韓国料理店からもトランク引いた若者が続々… 新たな違法民泊が横行 大阪・ミナミ」に次のように大阪府警の状況が記されている。
大阪の繁華街・ミナミで外国人向けの違法民泊が横行している。マンションの一室だけでなく、韓国料理店がインターネットで客を集め、空きスペースに宿泊させる手口も。
大半は旅館業法に基づく営業許可を取っていないとみられる。大阪府警も状況を把握しており、同法違反の疑いがあるとみて情報収集を進めている。
(中略)
市や府警には違法民泊を疑う通報が多くあるが、捜査関係者は「利用者は短期滞在の外国人観光客。事情を聴くのが難しく、摘発のハードルは高いと言わざるを得ない」と話している。
詳しくは、次のブログ記事をご参照。
大阪府警は大阪市内で横行する違法民泊を摘発すべく、慎重に調査を進めていたのだ。
ただ、このときはミナミ(中央区と浪速区にまたがる繁華街)を対象にした記事。今回摘発されたのは生野区である。
生野区のAirbnb登録件数は大阪市24区のうちでは少ないほうなのだが・・・
大阪市内にAirbnbが登録された物件は約9千件もあるのに、なぜ生野区の外国人の3人(女1人とレンタルビデオ店夫婦)だけが摘発されたのか?
大阪市内でAirbnbの登録件数が多いのは中央区(約2,900件)と浪速区(約2,000件)。生野区は一桁少ない230件に過ぎない。どちらかといえば、大阪市24区のうちでもAirbnbの登録件数は少ないほうだ。
Airbnb登録密度(行政面積当たりのAirbnb登録件数)で見ても、生野区は多くはない(次図)。
(AirbDatabankデータをもとに作成)
大阪市内では、1人でもっと多数の民泊を運営しているホストがいるのだが・・・
今回摘発された人たちが運営していた物件は、老女がマンションなど3カ所、レンタルビデオ店夫婦が戸建て2カ所。
大阪市内では、1人でもっと多数の民泊を運営しているホストがいるのに、なぜそちらを摘発しないのか?
たとえば、ホストランンキングを公開しているAirLABOサイトで調べると、大阪市内で多数の物件を運営しているホストTOP5は次のとおりだ(だたし、かならずしも違法とは限らない)。
1位と2位のホストは100件以上も運営している!
- 1位:K氏(151件) 業者?
- 2位:A氏(102件) 台湾出身の大阪育ちの男性
- 3位:T氏(60件) ?
- 4位:D氏(48件) 業者?
- 5位:S氏(45件) 日本人男性
AirLABOサイトの詳細については、「Airbnb物件データを可視化したサイト「AirLABO」」をご参照。
生野区の外国人人口の割合は2割!
今回摘発されたのは、いずれも外国人。
大阪市各区の人口構成を確認してみよう。
大阪市のホームページに「住民基本台帳人口・外国人登録人口」として公開されている、平成27年9月末日現在の「行政区別・男女別・外国人人口及び世帯数」データをもとに、大阪市24区の日本人と外国人の人口、外国人の割合を可視化した(次図)。
なんと生野区は、外国人の割合が2割(21.5%)も占めている!
生野区は全国で最も外国人居住者の比率が高い行政区の一つなのだ。
さらに最新の国勢調査データ(2010年)を用いて、24区の国籍を可視化してみた(次図)。
生野区は外国人27,260人のうち、韓国・朝鮮人20,753人、中国人630人。韓国・朝鮮人の占める割合は76%。
生野区は全国的に見ても外国人の人口割合が高く、76%が韓国・朝鮮人。だから今回の大阪府の摘発が韓国人2名(と中国人の夫1名)であったことは、確率的にはうなずける。
でも、なぜ摘発した場所がAirbnb物件が多くもない生野区だったのかは謎のままだ。
府警の摘発には一罰百戒効果はある、ただし納得感のある説明がほしい
なぜ大阪府警はAirbnb登録物件数が多くもない生野区で摘発に踏み切ったのか?
いろいろ調べてみたが、結局よく分からなかった。
外国人の割合がダントツに高い生野区を恣意的に選んだのか・・・・・・納得感のある説明が求められる。
ただ、大阪市内に数多くの違法民泊があるなかで、たったの2件とはいえ、大阪府警が摘発した意味は大きい。
限られた資源(捜査員とおカネ)で、効率的に違法民泊の数を減らしていくためには一罰百戒の効果は大きいからだ(「違法民泊」抑止は、警察摘発による一罰百戒効果に頼るしかないのか )。
「府警は地検に対し、起訴を求める厳重処分の意見を付けた」という(YOMIURI ONLINE 4月26日 16時48分)。
巧妙化する隠れ民泊の増加を抑止するには、警察や保健所による”一罰百戒作戦”か、”近隣住民・宿泊者等からの通報作戦”に頼らざるを得ないのが現状なのである(違法民泊の監視は「近隣住民・宿泊者等からの通報」に頼らざるを得ない? )。