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「民泊」が旅館・ホテル需要を食っている(浅草の事例)

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部のフェイスブックページを眺めていて、興味深い情報を見つけた。

浅草の雷門の側の宿では、お客様のいない日が続いているという全旅連青年部長の投稿だ。

もくじ

浅草の雷門の側の宿では、お客様のいない日が続いている

全旅連、日本旅館協会、フランスのホテル協会UMIH、GNIの合同懇親会。フランスでは民泊の出現により1日1軒のホテルが廃業に追い込まれているとのこと。現に浅草の雷門の側の部員の宿はお客様のいない日が続いています

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全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部フェイスブックページより

 

この2月の訪日外国人189万人は、月間としては去年7月に次いで過去2番目に多い人数(日本政府観光局 3月16日公表)だというのに、いったいどうしたことなのか?

浅草エリアのAirbnb登録物件の状況を確認してみよう。

浅草のAirbnb登録物件数は大田区に匹敵

Airbnbのホームページを開き、「浅草」で検索すると、208件登録(3月19日現在)されていることが分かる。

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208件の内訳は次図のとおり、大半がアパートだ(Airbnbでは「マンション」とは表示されない)。

アパート166件、一軒家31件、その他11件。

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208件というのは、民泊条例で騒がれている大田区(3月19日現在220件)に匹敵するレベル。

大田区で喧々諤々と議論されている闇民泊と同じくらいの件数が、この狭い浅草エリアで密かに拡がっているのだ。

 

お客様のいない日が続いているという旅館・ホテルに比べて、浅草のAirbnb登録物件の稼働率はどれくらいあるのか?

浅草のAirbnb登録物件の稼働率は8割以上

たとえば、浅草を対象に、3月20日~21日(1泊2日)で入力すると、「選択した期間に宿泊可能なリスティングの残り件数は、26件です」と表示される(次図)。

ゆえに、3月20日の平均稼働率は88%(=(208件-26件)÷208件×100)ということが分かる。

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この要領で、ゴールデンウィークあたりまで、毎日の平均稼働率を計算し、グラフ化したのが次図。

稼働率は3週間先までは8割以上。日によっては100%に迫る高い稼働率を示している。

この高い稼働率は、人気のあるAirbnb物件の値ではなく、208件の平均値なのだ。

「お客様のいない日が続いて」いるという旅館・ホテルとのギャップは大きい。

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このような高稼働率の闇民泊の脅威に晒されている旅館・ホテルは浅草に何件あるのか? 

浅草のAirbnb登録物件数は旅館・ホテルの総客室数の約2割!

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会のホームページに、浅草支部の旅館・ホテルの一覧が掲載されている(次図)。

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「浅草」で旅館・ホテルを営んでいるのは、合計22件。

内訳は、ホテル15件(うちラブホテル4件)、旅館7件。

これらの旅館・ホテルの客室数を調べ上げ、浅草Airbnb物件数と比べてみた(次図)。

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旅館・ホテルの客室数の合計1,107室(ラブホテルを含む)に対して、Airbnb登録物件数は208件。 旅館・ホテルの客室数の約2割(19%)。

 

浅草の旅館・ホテル(22件)とAirbnbに登録されている物件(208件)の位置関係を確認しておこう。 

本邦初!浅草Airbnb登録物件の分布図

筆者独自のノウハウ(※1)を駆使して、浅草でAirbnbに登録されている物件の位置を調べ、旅館・ホテルの位置と合わせて、地図に落としてみた。

 

雷門付近に、Airbnbに登録されたアパートが集中していることが分かる。

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上図では浅草で登録されているはずのAirbnb物件(208件)の一部が浅草エリアの外にも広がっている。

「浅草」で登録されているAirbnb物件であっても、実際の位置とはズラして表示されているためだ。

地図に立っているピンの位置は物件の正確な場所がわからないように、わざと少しズラして表示しています。

正確な住所は予約を済ませた人にだけ送信されます。

Airbnbのヘルプ文書

 

闇民泊が旅館・ホテルの需要を食い尽くす?

冒頭の「現に浅草の雷門の側の部員の宿はお客様のいない日が続いています」という全旅連青年部長の投稿。

訪日外国人の急増で、宿泊施設が不足しているというマスメディア情報とのギャップが大きい。

 

訪日外国人に最も人気の高いエリアのひとつである浅草においては、宿泊施設不足というキャバシティの問題だけではなさそうだ。

浅草の旅館・ホテルが、訪日外国人のニーズを捉えられていないのか、あるいは外国に向けて情報を適切に発信できていないのか?

「国内最大の旅館・ホテル組合サイト」YadoNetに掲載されていた浅草の旅館・ホテル一覧には、旧名のままのホテル名が掲載されいたり、リンク切れだったり。

 

稼働率の高いAirbnb登録物件数が、旅館・ホテルの総部屋数の約2割に達する浅草。

今後、Airbnb物件数が増えることはあっても、減ることはないだろう。

宿泊施設不足の改善を錦の御旗に、次のように民泊の規制を緩和する動きがあるからだ。

  • 旅館業法の規定見直し:民泊を旅館業法の「簡易宿所」に位置づけ面積要件緩和(16年4月予定)
  • 民泊拡大への新法制定:1泊2日からOK、住宅地での民泊OK(17年度?)

 

民泊条例が制定された大田区の実態を見るにつけ、強力な罰則規定とその実効性が担保されない限り、浅草のAirbnbも減ることはないだろう。

 

闇民泊が旅館・ホテル需要を食い尽くす。

民泊の出現により、1日1軒のホテルが廃業に追い込まれているというフランス。今後日本でも同じような状況になるのだろうか。
アマゾンが街の本屋さんを廃業に追いやったように。

 

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