チラシに記載すべき情報、具体的な記載の方法などを定めたルールとして、「不動産の表示に関する公正競争規約」がある。
不動産業界が自主的に定め、公正取引委員会の認定を受けた不動産広告のルールだ。
同規約では、不当表示の禁止ルールひとつとっても、交通の利便性、生活関連施設、CG、価格など、75もの項目が掲げられている。
実はこの「公正競争規約」は、不動産業界だけでなく、コーヒー飲料や即席めん、ビールや化粧品などの各業界にもある。
公正競争規約の条文の数では不動産がダントツの1位
一般社団法人 全国公正取引協議会連合会のホームページで調べると、12業界67業種の規約があることが確認できる。
業界・業種によって、規約の内容に違いはあるものの、概ね、「用語の定義」「必要な表示事項」「表示の基準」「不当表示の禁止」「違反に対する措置」で条文が構成されている。
業界ごとに規約の条文の平均数を計算し、グラフにしてみた。
不動産(1業種)がダントツの1位で、全部で29条から構成されている。
2位自動車等(4業種)の23.3条、3位家電・家庭用品等(10業種)の18.8条と続く。
不動産が圧倒的に多いのは、それだけ違反が多い業界であることの裏返しなのか――。
マンション広告で「新発売」を謳うことができるのは?
各業界・業種の規約を見比べていて面白いのは、「新発売」という用語の扱いだ。
「不動産の表示に関する公正競争規約」の第18条(特定用語の使用基準)では、次のように規定されている。
新発売
新たに造成された宅地又は新築の住宅(造成工事又は建築工事完了前のものを含む。)について、一般消費者に対し、初めて購入の申込みの勧誘を行うこと(一団の宅地又は建物を数期に区分して販売する場合は、期ごとの勧誘)をいい、その申込みを受けるに際して一定の期間を設ける場合においては、その期間内における勧誘をいう。
(規約 第18条)
とても分かりにくい条文なのだが――
ようするに、期分けごとに、初めて販売対象とする住戸に対して期間を設けて受け付ける「本広告」では、「新発売」という表現を用いることが許されているということ。
まだ分かりにくい?
たとえば、1月1日から1月14日までを登録受付期間として販売する場合には、1月14日付けの「本広告」までは、「新発売」と表示することが許されている。
ところが、その後売れ残った住戸に対しては、1月15日以降の広告では「新発売」と表示することが出来ないというのがルール。
まだ登録受付を始めていない時期に出す「予告広告」では、「新発売」という「特定用語」を謳えない。
だから「特定用語」の対象とはなっていない「新発表」という紛らわしい用語を代用することで、物件の新しさを“偽装”していチラシが多いというわけだ。
このとっても分かりにくい不動産業界の「新発売」の定義に対して、他の業界はどうなっているのか?
他の業種で「新発売」を謳える期間は?
化粧品の場合、「新発売」を謳えるのは発売後6カ月以内。
「新製品」、「新発売」等を意味する用語は、発売後 6 ヶ月以内でなければ使用することができない。
(規約施行規則 第15条の2 )
また、洗剤・石けんの場合は化粧品よりも長く、1年以内であれば新発売を謳うことができる。
「新製品」、「新発売」の文言は、当該商品の発売後、1カ年を超えて使用することはできない。
(規約 第6条)
自動車も洗剤・石けんと同様に、新車発売後1年間は「新発売」を謳うことができる。
「新発売」「新型登場」等の用語を使用できる期間は、新型車発表後12か月とする。
ただし、モデルチェンジ、マイナーチェンジ等新型車の発表が予定される以前の6か月間は使用しないものとする。
(規約施行規則 第15条)
面白いのは、自動車が1年間「新発売」を謳えるのに、オートバイなど(二輪自動車)は自動車の半分の期間、すなわち6か月しか「新発売」を謳えないことだ。
「新発売」、「新型登場」等の用語を使用できる期間は、新型車発表以後6か月とする。
ただし、当該新型車についてモデルチェンジ、マイナーチェンジ等の発表が予定されている場合は、その予定日以前の 3 か月間は当該用語を使用しないものとする。
(規約施行規則 第14条)
あと、テレビのCMでお馴染みの「コーヒー飲料」や「即席めん」、「ビール」には、特に「新発売」の規制がないことだ。
だから、これらの飲料については、いつでも「新発売」とか「新製品」と謳ってもお咎めはないことなになる。というか、次から次へと新製品が登場する業界だから、あまり問題にならないのかもしれない。
なお、出版については、「景品に関する公正競争規約」はあるが、「表示に関する公正競争規約」はない。