某ネットメディアの記者から、「民泊」のメリット・デメリットや筆者の見解について照会を受けた。
民泊とは何なのか? ザットまとめておいた。
「民泊」が出てきた背景
Airbnb利用者増加の要因のひとつに、見知らぬ人同士でも安心して部屋の貸し借りができるシステム上の工夫があげられる。利用者によるレビュー制度や本人確認を行うID認証など。
Airbnbに代表されるホストとゲストを低コストでつなぐプラットフォームの登場と、訪日外国人の急増による宿泊施設不足を背景に、“にわか大家さん”が増えている。
また、空き部屋を埋めるのに苦労している大家さんの一部も民泊に参入し始めている。
2014年4月国家戦略特別区域法施行令が施行された。これにより、特区に限り、別途自治体が制定する「民泊条例」の要件を満たすことで、旅館業法の適用を受けずに民泊を営める道が開かれた。
この特区民泊とは別に、215年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」において、「イベント開催時で、宿泊施設の不足が見込まれ、公共性の高い場合には、自宅を提供することは、旅館業法の適用外である」とされた。
立場の違いによる「民泊」のメリットとデメリット
ゲストにとって、ホテルや旅館よりも安く泊まることのできる民泊のメリットは大きい。
だが、法令を遵守していない部屋では安全・安心が確保できないリスク(事故や事件に巻き込まれる可能性)にさらされる。
旅館業法などの法的規制を遵守していない多くのホストにとって、民泊は高い収益性を確保できるが、法令違反リスクがつきまとう。
ホテル・旅館業界にとって、民泊との不公平な競争にさらされることへの反発は大きい。
ただ、一方で、一部のホテルや旅館ではAirbnbを利用して海外からの集客を図ろうとする動きもみられる。
周辺住民、特にマンション住人にとって、不特定多数が出入りする民泊は、安心・安全が確保できないだけでなく、資産価値が毀損することが最大のデメリット。
あるマンションでは、このような事情を知らずに訪れた外国人を住人が口論の末、追い返したというトラブル事例もある。
国や自治体にとって、民泊は急増する訪日外国人の宿泊先として、また空き家・空き部屋対策や地方創生の一助として、期待されている。
以上の「民泊」のメリット・デメリットを表にまとめておいた。
「民泊」を普及させるにあたっての2つの課題
民泊の主な課題は二つ。
不特定多数の外国人が出入りすることによって生じるマンション住人にとっての「資産価値の毀損問題」。
周辺住民、特にマンション住人とどう折り合いをつけていくのか。すでに自己防衛的にマンションの管理規約を変更し、民泊排除条項を取り込む動きが出ている。
二つ目は、法律を遵守している既存のホテル・旅館業界と、必ずしも法律を遵守していない民泊との「不公平な競争問題」。
大阪府議会で昨年可決された民泊条例案では、民泊は滞在日数7日以上でなければならない(6日以下の民泊禁止)。
1月29日からの施行を目指している全国初の大田区の民泊条例案も大阪府同様6日以下の民泊を禁止している。
この「7日ルール」により、既存のホテル・旅館業界の権益を守ることはできる。
しかし、厳格に適用されると、短期で貸し出ししている多くの民泊は運営ができなくなる。
なお、7日ルールのもと民泊を営めるのは東京都や神奈川県、大阪府や京都府といった特区内で、民泊条例が制定されたエリアに限った話。
非特区で営まれている民泊の扱いをどうするのかという問題は依然として存在している。
この問題を黙認すると、民泊条例は形骸化しかねない。
厚労省が中心となって、特区に限らず旅館業法などの見直しも含め検討を進めているようだが、果たしてどうなるのか――。
国や自治体など行政の役割
利益優先で運営されている「投資型民泊」と外国人とのコミュニケーションを大切にする「ホームステイ型民泊」。
地方と都市。特区と非特区。
従来の法律では想定されていなかった民泊を一律に扱うのは困難だ。
それぞれの実態を踏まえ、旅館業法の見直しや条例の制定を柔軟に行うことが国や自治体に求められる。
施行された条例等が遵守されているかどうかモニタリングし、必要に応じて修正していくという試行錯誤が欠かせない。
Airbnb以外にも、海外発のルームシェアリング・サービスは多数存在する。
たとえば中国版Airbnbである「途家網」や「住百家」は、貸し手・借り手ともに中国人だ。
日本人が全く関与していない民泊をどうコントロールするのか――。
民泊で海外からのお客様をオモテナシするためには、解決しなければならない課題が山積している。
(本日、マンション広告なし)