朝日の朝刊1面に鷲田清一の「折々のことば」が掲載されている。
10月18日に載っていたのは大阪の住職の言葉「たいがいにしときや」
地下街を追い出された路上生活者たちによって、境内をブルーシートだらけにされた住職が「出て行って」の代わりに発した言葉。
「ここが限度というところを判断してね、いざというとき受け容れられなくならないようにとの思い」だったという。
「マンション傾斜・偽装問題」に対するマスコミは、不正を行った担当者の魔女狩り的な報道から、ようやく三井住友建設の元請責任、三井不動産レジデンシャルの売主としての責任にも言及するようになってきた。
一人の管理者が杭工事で不正を行ったことを受けて、多くの工事現場でも同様のことが行われている可能性があるものとして、徹底的に追求しようという潔癖性は、重箱の隅をつつくことになりはしないか。
耐震偽装事件のときは1人の1級建築士の不正をとことん追求していった結果、建築関係法令の改正が行われた。
あまりにも拙速な法改正がその後のマンション不況の引き金となり、「改正建築基準法不況」とか「国交省不況」、あるいは当時の国交大臣の名前をとって「冬柴不況」と言われたほどだ。
法改正の実効性の是非はさておき、第三者機関による構造審査(ピアチェック)などが導入されるなど、設計のプロセスや役所の手続きが複雑化し、設計・施工コストの上昇や工期の延伸となり、マンション購入者の負担が増えることとなった(次図)。
「マスコミ情報では分からない!過去14年間の新築マンション市場を可視化して分かったこと」より
また、建築士事務所に属する建築士には3年ごとの定期講習が義務付けられたり、「構造設計一級建築士」や「設備設計一級建築士」、「構造計算適合性判定員」といった、より専門性の高い資格が創設されるなど、役人の利権拡大につながった(耐震偽装事件で生まれた、建築士の定期講習市場は10億円?)。
「パークシティLaLa横浜」以外のマンションでも施工不良が報じられた物件はいくつかあるが、マンションが傾いたのは珍しい。「パークシティLaLa横浜」は、あくまでも例外中の例外(と信じたい)。
マスコミもたいがいにしとかないと、行き着くところは耐震偽装事件の時のように、ツケを払わされるのは消費者、役人の利権拡大といったことになりかねない。
「原因を究明するな」と言っているのではない。やりすぎると、ろくなことにならないという話。誤解なされないようお願いします。
と、ここまで書いていて、本日の朝刊を見て「びっくりポンや」。
朝日の一面トップに、北海道の集合住宅でも旭化成建材の杭工事でデータ偽装が見つかったと報じている。
偽装にかかわった現場責任者は横浜のマンションとは別の人物。39面の記事では「偽装が個人の問題にとどまらず、会社の体質にかかわる可能性が出てきた」と記載されている。
「マンション傾斜・偽装問題」。マスコミの報道ラッシュは、まだまだ続きそうだ。
(本日、マンション広告なし)