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国民の多くがまだ気づいていない「民泊」の真実

先日のブログ記事で、大田区が年内に「民泊条例」を制定する予定であることを紹介した。
そのなかで、大田区は「民泊条例」制定後、区内の民泊不可能地域で違法営業しているAirbnb物件をキチンと取り締まれるのか、といった問題を提起をした(大田区は「民泊条例」を厳格に適用できるか)。

本日は「民泊条例」制定の拠り所となっている特区法(国家戦略特別区域法)が規定している「最低滞在期間:7~10 日までの範囲」について問題を指摘したい。


もくじ

 

特区法で「民泊」が可能なのは「最低滞在期間:7~10日以上」と規定

「民泊条例」制定の拠り所となっている特区法(国家戦略特別区域法)の施行令第12条第2号で、施設を使用させる最低期間(最低滞在期間)を「7~10 日までの範囲」において、条例で定めることになっている。

第12条2(法第13条第1項の政令で定める要件)

2 施設を使用させる期間が7日から10日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合にあっては、当該保健所を設置する市又は特別区)の条例で定める期間以上であること。

 

この条文は、「7~10 日」未満の滞在期間では、「民泊」で部屋を貸し出せないことを意味している。
言い方を変えると、「民泊」では、滞在期間が「7~10 日までの範囲」を超える長期滞在者にしか部屋を貸し出せないということだ。

「最低滞在期間」を7日以上とするのか、8日以上とするのか、・・・10日以上とするのかは、条例で定めることになっている。

 

なぜ、「7~10 日までの範囲」というような最低滞在期間が法律で規定されたのか?

「最低滞在期間:7~10日以上」が規定された背景

その背景は、国家戦略特区ワーキンググループが平成26年1月21日に開催した会議の厚生労働省へのヒアリング配布資料滞在施設の旅館業法の適用除外、歴史的建築物に関する旅館業法の特例についてPDF:621KB)」から読み解くことができる。

外国人滞在施設経営事業の滞在期間について

  • (省略)
  • 国家戦略特区においては、国際的な経済活動の拠点にふさわしい外国人の滞在に適した施設の事業の促進に資するため、外国人滞在施設について、旅館業法の特例措置を講じるものであるが、公衆衛生や善良な風俗の保持の要請や、ホテル・旅館との役割分担等も考慮し、特区法においては、外国人滞在施設経営事業の要件として一定期間以上の滞在期間を求めており、その期間としては10日とすることを考えている。

  • これは、滞在の期間が長くなれば、短期間に宿泊者が入れ替わるホテルや旅館の場合よりも、定住性が強まり、公衆衛生上のリスクが減じられるとともに、宿泊施設の立地に懸念を有する周辺住民との関係でも受容しやすいといった点を考慮したものであり、さらに、新型インフルエンザ等の感染症対策との整合性や、滞在施設として、旅館業法の規制の対象となっているホテル・旅館との役割分担も踏まえ、設定するものである。

  • 新型インフルエンザ等については、潜伏期間も考慮し、検疫法や新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく停留措置の期間を 240 時間(10日間)と定めている。

  

上の文章を意訳すると、「最低滞在期間」を設定するのは、ホテル・旅館業との競合を避けられることや、定住性が高まることで周辺住民が受容しやすいことなどを総合的に考慮した結果ということになっているのだ。

平成26年1月21日の段階では未だ「7日」という数字は出てきていない。施行された法律では「10日」ではなく、「7~10 日までの範囲」と、最低滞在期間の下限値が広げられたのは、ホテル・旅館業界との競合を避けるというよりも、ホテル・旅館業界の既得権益を守ることを優先したためではないのか。

 

新型インフルエンザの潜伏期間10日間を持ち出してきているあたりは、無理矢理感が否めない。法律では最終的に「7~10 日までの範囲」と規定されたので、新型インフルエンザの潜伏期間理由は、最低滞在日数を規定するうえで、既に説得力を失っている。

 

「民泊」の最低滞在期間が「7~10 日までの範囲」でなければならないと法律で規定されたことによって、日本ではAirbnbで部屋を貸し出すことがほどんできなくなるのではないか、というのが筆者が指摘したい点だ。

 

その根拠を3つ、以下に示そう。 

東京を訪れる6割の外国人の滞在日数「7日未満」は「民泊」対象外

観光庁が定期的に公表している訪日外国人消費動向調査には、都道府県別に、滞在期間別の外国人の割合が分かるデータが掲載されている。
そこで、「平成26年の年間値の推計(暦年)※確報値」から東京都のデータを可視化してみた。

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東京都を訪れる外国人の平均滞在日数は約5割が「4~6日間」であって、1週間を超えていない。「3日以内」と「4~6日間」を合わせた「7日未満」が約6割。

「7日間以上」は約4割。


「民泊」は、最低滞在期間が「7~10 日までの範囲」でなければならないから、東京都を訪れる外国人の約4割が「民泊」の対象となる。

ただ、この4割がすべてが「民泊」の対象となるのかといえば、そうではない。

上の数字は、あくまでも訪日外国人が都内に滞在する日数であって、1か所の施設に留まっている日数とは限らないからだ。

 

では、1か所に連続して宿泊している日数はどれくらいなのか?

外国人の1施設あたりの宿泊日数は「3日間未満」でしかない

観光庁が定期的に公表している宿泊旅行統計調査には、都道府県別に、日本人・外国人の「延べ宿泊者数」「実宿泊者数」のデータが掲載されている。
そこで、「平成26年1月~12月分(年の確定値)」の東京都の宿泊日数(=延べ宿泊者数÷実宿泊者数)を計算し、グラフにしてみた。

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都内で宿泊する外国人の1施設あたりの平均宿泊日数は3日にも満たないことが分かる。
日本人と外国人を合わせた平均だと2日にも満たない。

よって、「7~10 日までの範囲」以上連続して1か所の施設で宿泊する「民泊」のニーズは多くはないと考えられる。

 

「民泊」は外国人だけでなく、日本人でも利用することができる。

では、出張や観光目的などの日本人の「民泊」需要はどの程度期待できるのか?

「民泊」は日本人の宿泊ニーズにもマッチしていない

観光庁が定期的に公表している旅行・観光消費動向調査に、日本人の国内旅行の目的別の宿泊数データが掲載されている(都道府県別のデータはない)。
そこで「2014年1~12月期(確報)」のデータを表に整理しててみた。

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日本人が観光・リクレーションや出張で7日以上滞在(宿泊日数としては6泊)するケースは4.7%と少ない。

日本人の多くは1~3泊しかしない。
したがって、最低滞在期間が「7~10 日までの範囲」としている「民泊」は、日本人の宿泊のニーズにもマッチしていないのだ。

 

まとめ(特区法「7~10 日までの範囲」ルールの功罪)

特区法の条文をよく読むと、「民泊」では滞在期間が「7~10 日までの範囲」を超える長期滞在者にしか部屋を貸し出せない立て付けになっていることが分かる。

観光庁の統計データによれば、訪日外国人が1か所で宿泊するのは高々3日間である。

したがって、特区法の「7~10 日までの範囲」ルールのおかげで、ホテル・旅館業界は「民泊」によって宿泊客を奪われる影響がかなり小さくなっている

 

「民泊」で一儲けしようとしている人たちは、同ルールによって冷や水が浴びせられた状況になっているのだが、このことに気づいている人は少ないであろう。

大田区に続き都内各区で「民泊条例」が制定され、同条例が厳格に適用されると、「民泊」需要を当て込んでマンションを購入した人は負債を抱え込むことになる。

特区法の「7~10 日までの範囲」ルールによって、ホテル・旅館業界の既得権益はある程度守れたものの、Airbnbを活用して空き部屋を貸し出そうというシェアリング・エコノミーの芽がほどんど詰まれてしまっている

これでは「悪い民泊」だけでなく、「いい民泊」も浮かばれない(Airbnbの争点 「良い民泊」「悪い民泊」)。

 

「民泊」を地方再生や宿泊施設不足に役立てようと旗を振っている政治家はこのような事実を理解しているのだろうか?

現場の人たちは、このことを上位者にキチンと伝えているのだろうか?

マスメディアはこのような状況を理解したうえで、視聴者に伝えているのだろうか?

 

キチンと伝える材料が不足しているというのであれば、手前味噌で恐縮だが、拙著「マンション住民は Airbnb対策を急げ![Kindle版]をご活用あれ。

なお、Kindleをお持ちでなくても、Kindleアプリ(無料)をインスト―ルすれば、スマホでもタブレットでも読むことができる。

(本日、マンション広告なし)

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