ルームシェアリング・サイトは多数立ち上がっているものの、サイトへの訪問者数ではAirbnb.comがダントツの1位(ルームシェアリング・サイトは一強多弱)。
IT関連のビジネスモデルは勝者総取りに向かう傾向が強いので、後発サイトは特徴を出さないと生き残れない。
そんななかで、農家などに一般の人を宿泊させる民泊の仲介サイトがある。
ITベンチャー企業の百戦錬磨(仙台市)が2014年3月にサービス開始した「とまりーな」だ。
- 民泊で地域を盛り上げるサイト「とまりーな」
- 「とまりーな」登録物件数は541件とまだ少ない
- 「とまりーな」登録物件数の都道府県ランキング
- 「とまりーな」登録物件は地方に多い
- 法的にグレーなAirbnbとは一線を画す「とまりーな」
- 「国家戦略特区」構想に準拠したサービス「TOMARERU」
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民泊で地域を盛り上げるサイト「とまりーな」
元楽天トラベルの執行役員である上山康博社長(53)が、2011年の東日本大震災を機に「国内外の観光需要が都市部に集中する現状を変え、東北やその他の地方へ広がる仕組みづくりをしたい」という思いを抱き、仙台市で起業したという(2015年9月7日サンケイビズ|ウェブで民泊仲介 地方の観光需要喚起)。
「とまりーな」のトップ画面には「紀国 わかやま国体」の写真が大きく表示されている。ヘッダー部の「とまりーな」のロゴはほとんど目立たない。
「農林漁業の体験民泊」のページから宿泊先を選ぶこともできる。
「農家で農業体験」「農家で農業体験」「古民家で田舎暮らし」といった、都会人にとってはとても魅力的な民泊が用意されている。
「とまりーな」登録物件数は541件とまだ少ない
トップ画面をスクロールすると、「エリア選択」のためのプルダウンメニューが表示される(次図)。
プルダウンメニューには都道府県ごとに登録件数が表示されているので、表形式で整理してみた。
合計541件(2015年9月7日現在)。
4県(石川県、山口県、佐賀県、大分県)にまったく登録がないのは、ちょっと残念。
全国で約2万件(賃貸アパート14,815件+一軒家5,603件)登録されているAirBnBの2.7%(8月3日現在)に過ぎない。
百戦錬磨の上山康博社長は、「16年春までに全国での宿泊先登録を約3,000件に増やしたい」という(2015年9月7日サンケイビズ|ウェブで民泊仲介 地方の観光需要喚起)。
「とまりーな」登録物件数の都道府県ランキング
福島県(73件)と長野県(57件)の登録件数が相対的に多い。
トップ20は次のとおり。
- 1位:福島県(73件)
- 2位:長野県(57件)
- 3位:沖縄県(37件)
- 4位:岩手県(26件)
- 5位:和歌山県(24件)
- 6位:北海道(23件)
- 7位:青森県(22件)
- 8位:栃木県(22件)
- 9位:静岡県(22件)
- 10位:新潟県(21件)
「とまりーな」登録物件は地方に多い
「とまりーな」登録物件数を地図に落としてみた。
Airbnbとは対照的に「とまりーな」の登録物件は地方に多いことが一目瞭然だ。特に東北地方に多い。
ちなみに、Airbnbの賃貸アパートの登録件数(7月31日現在)の分布は次図のとおり。
「なぜ佐賀県が9位?! AirBnB登録件数ランキング」より
法的にグレーなAirbnbとは一線を画す「とまりーな」
「とまりーな」は公共のイベント会期中に限定する反復継続的ではない民泊を提案するサービスとなっている。
サービス利用規約において、ホストが登録できる物件は次のとおり、法を満たすものに限定されている。
- ホストが旅館業法第 3 条に定める許可を受けた物件を宿泊施設とする宿泊サービス
- 前号に定める施設のほか、当該物件を用いて旅館業法に定める旅館業を行うことが法令(国家戦略特別区域法を含みます)により許容されている物件における宿泊サービス
- 農山漁村での生活体験等の受入サービス(ホストが受け取る対価が農山漁村生活体験の指導料、食事代の実費、消耗品の実費のみであり、宿泊に関して営利を目的とせず、かつ宿泊料を受けないものに限ります。(略)
- 前各号に定めるほか、旅館業法その他の法令に抵触しない範囲で提供される宿泊サービス(イベント開催時における宿泊施設の不足に対応する公共性の高い宿泊サービスと認められるものを含みます)(以下、省略)
「とまりーな」を展開している百戦錬磨社は、法的にグレーなAirbnbとは一線を画し、ブラックはもちろん、グレーにも手を出さない。ホワイトな事業として、民泊ビジネスに取り組もうとしているようだ。
「国家戦略特区」構想に準拠したサービス「TOMARERU」
百戦錬磨社は、マンションや一軒家の空き部屋に宿泊客を泊めて収益が得られる「TOMARERU」サイトの開設準備を進めている(次図)。
TOMARERUは、「国家戦略特区」構想に準拠したサービスであることに特徴がある。すなわち法的にホワイトな事業だ。
「とまりーな」や「TOMARERU(とまれる)」のサイトを運営している(株)百戦錬磨の上山康博社長は観光庁の観光産業政策検討会の委員や旅行産業研究会の委員も歴任されているので、旅館業法等の法令は守らざるを得ない立場であろう。
「TOMARERU」サイトに対しては、深刻化する空き家問題を背景に、不動産サブリース会社などからきわめて高い反響があり、すでに数万戸に及ぶ仮オーダーが寄せられているという(月刊レジャー産業資料 2015年8月号)。
百戦錬磨が目指しているのは「良い民泊」のようだ(Airbnbの争点 「良い民泊」「悪い民泊」 )。
「国家戦略特区」構想に準拠したサービスの今後の展開に期待したい。
Airbnbのなんたるかがよく分からない方は、このブログで書き溜めてきたAirbnb関連記事をご覧ください。
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