「シェアリング・エコノミー ―Uber、Airbnbが変えた世界(日本経済新聞出版社)」
アマゾンの和書で、Airbnbに関する本はこれしか出版されてなかった。税込1,728円。
慶応大学商学部卒、22歳、若手大手証券会社アナリストの著書。
全7章のうちの多くの部分がUberとAirbnbの話題に費やされている。
- 第1章 台頭するシェアリング・エコノミー
- 第2章 求められる新たな枠組み ——規制と労働
- 第3章 P2P宿泊サービス ——Airbnbが変えた世界
- 第4章 ライドシェアサービス ——Uberが変えた世界
- 第5章 広がるオンデマンド型サービス
- 第6章 カーシェアリング・サービス
- 第7章 広がるシェアリング・サービス
読んでみるとなかなかの良書。出典が23ページもあり、原文をフォローしやすい。
Airbnbのあり方について、「なるほど」と感じた部分をいくつか紹介しよう。
Airbnbの良い面は「新たな需要の創造」と「田舎町への集客」。
シェアリング・エコノミーは、単にこれまで既存産業が取り込んでいた需要を奪うだけでなく、新たな需要を創造する可能性がある。
たとえば、これまでホテルがなく滞在できなかった田舎町でもAirbnbなどを活用すれば、観光客が訪れることができるようになる。
(「第1章 台頭するシェアリング・エコノミー/シェアリングのインパクト」P36)
Airbnbの良い面だけでく、負の側面にもシッカリ言及されている。
宿泊税などを支払わない、ホテルの営業基準や許可を満たさないことでコストを下げ、既存のホテル業界を圧迫しているのではないか、というものである。
(「第1章 台頭するシェアリング・エコノミー/シェアリングが引き起こす問題」P45)
かといって、Airbnbにホテルと同じ規制を守らせるのは、あまり意味がないという。
通常の住宅やアパートの一室を貸し出すAirbnbのホスト(部屋の貸し手)に対して「ホテルと同じ規制を守れ」というのは、あまり意味がないといえるだろう。
現状のホテルに対する規制は、そもそも個人が宿泊業を容易に営める環境を想定してつくられたものではないからである。
(「第2章 求められる新たな枠組み-規制と労働」P49)
では、どうすればいいのか?
キーワードは外部不経済。
既存産業に向けてつくられた現行の規制をそのまま適用するのではなく、外部不経済を防ぎつつ、シェアリングーエコノミーの発展を阻害しないように規制を整備し直す必要がある。
(「第2章 求められる新たな枠組み-規制と労働/外部不経済をどう解決するか」P58)
外部不経済とは、あるサービスを提供することによって、その市場の外部で不利益が生じることをいう。
たとえば、工場が生産を行うことで、環境破壊や健康被害といった問題が生じる。このとき問題となるのは、その原因でもある当事者が、外部不経済に対して何らかの負担をする仕組みがないことである。
たとえば、Airbnbを通じて、住宅地にある部屋が貸し出されたとしよう。当事者同士の取引に問題がなくても、客が騒いだり犯罪行為に手を染めたりすれば、騒音被害や治安の悪化といった外部不経済が生じる。
(「第2章 求められる新たな枠組み-規制と労働/外部不経済をどう解決するか」P55)
役所が関与すべきは、外部不経済を防ぐための規制についてのみだという。
外部不経済にかかわる問題以外は、政府や自治体よりもプラットフォーム運営企業が自らルールづくりを行ったほうがはるかにうまくいくだろう。
政府や自治体の関与が求められるのは、外部不経済を防ぐための規制についてのみである。
(「第2章 求められる新たな枠組み-規制と労働/規制づくりの4つのポイント」P64)
特区(国家戦略特別区域)以外での Airbnbをすべて取り締まることは不可能だから、特区での条例は形骸化する恐れがあると指摘している。
特区政策が始まった際、他地域での個人間の短期の不動産の貸し借りをすべて取り締まるのは事実上不可能であり、この特区政策自体が形骸化する可能性もある。
ニューヨークの例を見てもわかるように、それに該当するすべての貸し手を摘発することは不可能であることから、宿泊客の身元確認の義務化、損害賠償保険への加入など最低限の規制を課したうえで合法化して、きちんと税金を課すべきである。(「第3章 P2P宿泊サービス-Airbnbが変えた世界/求められる規制とサンフランシスコ市での合法化」P107)
民泊条例を制定できる国家戦略特区については、「民泊条例を制定できるエリアを可視化してみた」をご参照。