昨日(7月2日)の朝日新聞32面の「シニア向け分譲マンション」の全面広告。
掲載されている3つの物件は、いずれも都心への交通の便はあまりよろしくない。
「シニア向けの分譲マンションなんだから、交通の便が多少悪くても問題ありません」といったセールストークが聞こえてきそうだ。
物件M概要
【第1期予告広告】新宿駅42分(途中急行乗換)、駅バス9分。総戸数82戸、4階建。販売戸数/未定、1LDK(40.23m2)~2LDK(76.16m2)。販売価格/未定。平成28年9月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年3カ月後)。
物件K概要
【第1期予告】秋葉原駅直通32分、駅徒歩5分。総戸数271戸(住戸266戸、店舗5戸)、15階建。販売戸数/未定、1LDK(54.00m2)~2LDK(80.06m2)。販売価格/未定。平成29年2月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年8カ月後)。
物件T概要
【先着順】秋葉原駅直通43分、駅徒歩7分。総戸数150戸、9階建。販売戸数12戸、1LDK(51.19m2)~2LDK(69.75m2)。販売価格2,698万円~4,148万円。平成26年12月11竣工済み(本チラシ掲載日の7カ月前)。
3物件とも見た目は普通のマンションと変わりはない。ただ、間取りは1LDK~2LDK。たしかにシニア向けの間取りになっている。
いずれの物件にも「多彩な共用施設」が備わっているのが大きな特徴だ。
- 温泉大浴場
- ダイニング&レストラン
- ビリヤード/娯楽室(カラオケ・囲碁・麻雀)
物件Tのみ管理費が掲載されている(他の2物件は「予告広告」なので管理費が掲載されていない)。
月額36,952円~49,652円の管理費で温泉大浴場の維持管理費もキチンと賄えるのだろうか?
都内の銭湯ですら大人460円の入浴料金でのやりくりが大変なのだぞ!
また、どの物件にも「充実の安心体制」が敷かれることになっているらしい。
- 医療・看護・介護サポート
- 見守りサポート
・24時間356日スタッフが常駐
・緊急コールボタン
・ライフセンサー- 健康管理室
介護・見守りサービスは、どこまで対応してくれるのか?
また、その費用負担はどうなっているのか?
ホームページをひも解いてみると、次のように中途半端な記載しか見当たらない。
サービスは個人契約が必要なもの、有料なものがございます。
詳しくは係員にお問い合わせください。
要介護の度合が進み、自立した生活が困難になっても面倒を見てもらえるような仕組みにはなっていない。「あとは自己責任」の世界なのであろう。
そもそもこれらの「シニア向け分譲マンション」は、通常の新築マンションを建てても売れないような交通の便の悪い敷地に、無理やり温泉を掘って、1LD~2LDKの住戸を詰め込み、「多彩な共用施設」と中途半端な「医療・看護・介護サポート」を付けただけではないのか。
65歳の定年者が購入した場合、実際に住めるのは健康寿命を75歳とするとわずか10年間でしかない。
その10年間、ビリヤードやカラオケを楽しみ、健康状態をモニタリングしてもらうために数千万円の「シニア向け分譲マンション」を買うのは、お金を持て余した老人くらいであろう。
まあ、郊外のイマイチな立地にしか手を出せないデベロッパーにとっては、ファミリー向けの分譲マンションであろうが、「シニア向け分譲マンション」であろうが、売れればよし。10年後のことなどお構いなしといったところか――。
「シニア向け分譲マンション」とは、どうしようもない敷地を活用した、団塊の世代のフトコロを狙った「売り逃げマンション」ではないのか。
健康寿命が尽き、世帯主が出て行った後のシニア向け分譲マンションの行く末を憂う。
(本日、マンション広告2枚)