日本建築学会の会員になって30数年。
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今月の特集は「空き家考」。なんともスノビッシュなタイトルだ。
- もっぱら戸建の空き家にしか目が向けられていない建築学会誌
- マンションの方が一戸建てより170万戸も空き家が多い!
- 空き家とされているマンションのち9割近くが借り手のない賃貸マンション
- マンションの空き家率は一戸建ての2倍!
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もっぱら戸建の空き家にしか目が向けられていない建築学会誌
全102頁のうち42頁がこの特集記事で、次の3部構成となっている。
- 第1部 空き家の実情分析
- 第2部 空き家論
- 第3部 空き家活用のアイデアと問題
空き家の増加をもたらす社会的要因を分析し(第1部)、文化人類的・都市論的・文明論的な視点から空き家を考察し(第2部)、空き家を利活用することで問題の解決を図ろうとしている事例が紹介されている(第3部)。
※詳しくは建築雑誌2015-6月号もくじ参照。
この特集記事を読んでいて、とっても違和感があるのは、もっぱら戸建の空き家にしか目が向けられていないことだ。
19名もの建築の専門家が執筆あるいは議論しているのに、マンションの空き家については、ほとんど触れられていない。
まるでマンションには空き家など存在していないかのような扱いなのだ。
マンションには空き家の数は、たいしたことがないのか?
マンションの方が一戸建てより170万戸も空き家が多い!
空き家のデータについては、総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」をひも解けば、「居住世帯の有無」として、市区町村単位までエクセルデータが公開されているのだが、残念ながら、マンションと一戸建てを合わせたデータだ。マンションだけの空き家データを抽出することはきない。
でも、総務省が平成26年12月25日に公表した「共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(速報集計結果)からの推計」データのほうは、全国の共同住宅(以下、共同住宅≒マンション)の空き家戸数は分かる(次表)。
平成25年の全国の空き家数約820万戸のうち、共同住宅約470万戸、一戸建てが300万戸。
共同住宅の方が一戸建てより170万戸も空き家が多いのだ。
もう少し分かりやすいように、この表を可視化(グラフ化)してみよう。
空き家とされているマンションのち9割近くが借り手のない賃貸マンション
一戸建ての空き家は、約7割が「その他の住宅」。
「その他の住宅」とは、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅などのこと。
まあ、その多くが世帯主の高齢化による入院、死去などによる不在なのだろうが・・・・・・。
一戸建てよりも共同住宅のほうが空き家の数が多い。9割近くが「賃貸用の住宅」。
つまり、空き家とされているマンションのち、9割近くが借り手のない賃貸マンションであるということだ。
これはこれで、困った状況だ。
ちなみに、住宅の種類の定義は次の通り(用語の解説より)。
- 二次的住宅:別 荘や、ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅
- 賃貸用の住宅:新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
- 売却用の住宅:新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
- その他の住宅:上記以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など
共同住宅の方が一戸建てより170万戸も空き家が多いことは確認できたのだが、空き家率としてはどうなのか?
マンションの空き家率は一戸建ての2倍!
上表の空き家戸数を、住宅の建て方別(共同住宅、一戸建て、長屋建て)の戸数(←このデータは「住宅・土地統計調査」のなかにエクセルデータとして公開されている)で割って空き家率を求めた結果が次図。
共同住宅の空き家率21%に対して、一戸建ての空き家率は10%。
マンションの空き家率は一戸建ての2倍もあるのだ。
以上により、マンションは一戸建てと比べて、空き家の戸数も率も高いことが分かった。
建築の専門家はマンションの空き家問題についても議論すべし!
(本日、マンション広告なし)