不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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URの川口芝園団地は健全に発展しているか?

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Photo by マンション・チラシの定点観測 CC BY 3.0.

 

先日のブログ記事「中国人が増えて、地域のコミュニティが悪化している団地がある 」への反響が大きかった。

 

芝園町の人口(≒UR都市機構 川口芝園団地の人口)が、オセロのコマをひっくり返したように、日本人が抜けた後に次々と外国人(主に中国人)が入ってきている状況にお驚かれた人が多かったようだ(次図)。

※20年9月18日データ更新

川口市芝園町の人口推移
中国人が増えて、地域のコミュニティが悪化している団地がある 」から

 

中国人が増えることによって、浦野正樹教授の2013年のゼミ学生論文「華人ニューカマーによるエスニックコミュニティの郊外化--埼玉県川口市 芝園地区における地域変容--」に記されたように、ほんとうに地域のコミュニティが悪化しているのか?

平日の昼間、川口芝園団地内を歩いてみた。


もくじ

川口芝園団地内を歩いてみた

大友克洋作の『童夢』のモデルになったというこの団地。北面のファサードはなかなか壮観だ。
15階建て、長さ500mにも及ぶ壁面は、JRからの騒音防止機能を兼ねている。

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(北側の公園から撮影)

 

団地内は手入れがよく行き届いている。

ゴミが散らかっているような状況は見られない。

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(団地の南面)

 

中国語の看板が多い!

自転車置き場だって、写真のようにキチンと整理されている。

団地内の他の自転車置き場においても、乱雑な状況は見られなかった。

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ただ、自転車置き場に張り出された掲示に、日本語と中国語が併記されているのが、普通の団地と違うことろだ。

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そういう意味で言うと、ゴミ置き場の掲示はもっとインパクトがある。

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(キレイなゴミ置き場)

 

日本語と中国語と英語の3か国語で記された、粗大ごみの注意書き。

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日本語と中国語と英語の3か国語で記された、月2回のプラスティック類、金属類の取集日。

中国語だけでなく、英語も併記したのは、少数者への配慮か?

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このほかにも、グランド利用上の注意書きが、日本語と中国語の2枚看板。

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遊び場も日本語と中国語の2枚看板。

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「周囲にお住まいの方々の迷惑となるような行為をしないでください」といったような注意が書かれている。

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あと、団地内のスーパーのガラスにも、日本語と中国語の併記。

「買物カートの記帳貸出しの制度を、12月1日より注意させて頂きます。買物カートの御利用は店内でのお買物専用とさせて頂きます」と書かれている。

不届き者は誰だ?

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構内のお知らせ看板に張り出された2枚の注意書き文書は、どちらも中国語。

日本語がないので、なんと書かれているのか分からない。

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団地内にあったお店の看板は「家的滋味真好」。

日本語表記がないので分からない。

まあ、店の中をのぞけば何が売られているのか分かるから問題はないのだが――ここは中国か?!

Googl翻訳で調べると、「家の素敵な味」という意味であることが分かる。

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以上のように、中国人の割合が増えたからといって、ゴミが散らかっているとか、自転車置き場がゴチャゴチャになっているとかいうような様子は全く見られなかった。

 

むしろ環境美化の度合いは、日本の団地のレベルの平均点を大きく上回ってるように感じた

 

ただ、看板や張り紙に見られたように、中国語が併記されていることはもちろん、中国語だけで日本語の表示がない場所も観測された。

すれ違った多くの人の中国語を聞いていると、ここは本当に日本なのかという錯覚に陥る。

 

UR都市機構の緩い規定は何を目的としているのか?

この川口芝園団地住んでいる中国人は、1980年代後半から1990年代にかけて留学生・就学生として来日したニューカマーズ(新華僑)。大学や大学院を修了し、「技術者」「永住者」「配偶者」として在留している高学歴者が多い。

 

彼らがこの団地に集まってきた理由のひとつは、外国人も入居しやすいUR都市機構独自の規定(礼金なし、仲介手数料なし、保証人・保証料なし、更新料なし)が掲げられる。

また、手入れの行き届いた団地にしては、家賃もお手頃なのであろう。

駅徒歩7分。1K(31m2)~3DK(71m2)で、月額家賃52,700円~122,100円、共益費2,620円

現在、空室がないほどの人気ぶりだ。

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UR都市機構独自の規定(礼金なし、仲介手数料なし、保証人・保証料なし、更新料なし)は、そもそも何を目的とした支援制度なのか?

 

独立行政法人都市再生機構法の第3条(機構の目的)には次のように記されている。

独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)は、機能的な都市活動及び豊かな都市生活を営む基盤の整備が社会経済情勢の変化に対応して十分に行われていない大都市及び地域社会の中心となる都市において、市街地の整備改善及び賃貸住宅の供給の支援に関する業務を行うことにより、社会経済情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び居住環境の向上を通じてこれらの都市の再生を図るとともに、都市基盤整備公団(以下「都市公団」という。)から承継した賃貸住宅等の管理等に関する業務を行うことにより、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図り、もって都市の健全な発展と国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。

都市の健全な発展国民生活の安定向上に寄与することを目的」としているUR。

 

現在、空室待ち状況のUR川口芝園団地。
日本人よりも、中国人が新たに申し込むインセンティブのほうが高いだろうから、先着順受付方式を採用している限り、今後とも中国人の割合が増え、中国人のための団地になっていくのではないのか。

 

日本人が減って、代わりに中国人が増えていく状況は「健全な発展」といえるのか?

 

日本人であれ、中国人であれ、団地が満杯になって、UR(独立行政法人)が潤えばいいという話なのか?

「中国人の爆買いで日本が潤えばいい」という類の話とはチョット違うと思う。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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