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なぜ「一級外科医」という資格はないのか?

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photo by Aleera*

 

群馬大病院で腹腔鏡による肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題。

人命をあずかる職業に対して、必要な技量があることをどのようにして、確認しているのか?

建築士の場合

2005年の姉歯の構造計算書偽造事件(耐震偽装事件)の結果、建築基準法が改正され、建築確認手続きが厳格化されただけでなく、従来の一級建築士に加え、さらに専門性の高い構造設計一級建築士設備設計一級建築士が創設された。

 

登録者数は次の通りだ。

(公益財団法人建築技術教育普及センターによる)

  • 一級建築士:352,453人(平成25年9月30日現在)
  • 構造設計一級建築士:9,375名(平成26年12月17日現在)
  • 設備設計一級建築士:4,805名(平成26年12月10日現在)

姉歯事件後、建築士事務所に属する全ての一級建築士は、3年ごとの建築士定期講習の受講が義務付けられた(ただし、建築士事務所に所属していない建築士は受講義務なし)。

また、構造設計一級建築士と設備設計一級建築士は、建築士事務所の所属の有無に係らず3年ごとの定期講習の受講が義務付けられている。

その結果、大きな資格講習市場が生まれた(詳しくは耐震偽装事件で生まれた、建築士の定期講習市場は10億円?参照)。

大震災で建物が崩壊して人命が失われるリスクの大きさを考えると、シッカリした建築の専門家が建物の設計・審査に係らなければならない。よって、そのような専門家の技量を定期的にチェックしようという考え方。

 

消防設備士の場合

消防設備だって、消防設備士という国家資格があり、甲種と乙種(建築士でいえば一級と二級)、それぞれ第一類~第五類、第一類~第七類と細分化されている。

これら消防設備士は5年ごとの講習が義務づけられている。

まあ、建物火災も人命に係ることだから、最新の法令や技術、火災事例などを学ぶ機会を兼ねた講習は意味がないわけではない。

 

ドライバーの場合

自動車の運転免許しかり。

人命に直結することなので、ドライバーの安全意識を高めるための、ペーパー講習は全くの無駄とはいえないだろう。

 

以上のように直接的・間接的に人命に係る職業(ドライバーは全員が職業としているわけではないが)に対して、資格制度を設け、免許の更新義務を課している。

 

なのに、最も直接的に人命を預かる医者に、なぜ免許の更新義務がないのか?

たとえば、アメリカでは医師免許は有効期限付きであり、1~2年ごとに更新しなければならない(足利洋志ほか『アメリカにおける医師免許と専門医制度』2006年4月3日週刊医学界新聞)らしい。

 

医師免許の更新制度は2005年、小泉内閣のときに「医師免許更新制は05年度中に検討し結論を得る方針」とされていたが、複数の議員から強い反対意見が出され「規制改革・民間開放推進3カ年計画(改定)」の原案から削除された。


反対の理由は「医師免許更新制」への疑問(全国保険医団体連合会政策部員 三浦清春)に詳しい。

医師会の政治力は強力なので、一級外科医とか一級産婦人科医などといった資格も更新講習も、ちょっとやそっとでは創設されそうもない。

(本日、マンション広告なし)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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