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「浴槽での溺死」が「交通事故死」を上回りそうな勢い

高速道路で大きな事故や悲惨な事故が発生するたびに、ニュース映像が流される。
厳罰化や広報・啓発の効果もあり、交通事故による年間の死亡者数は年々減少し、過去最悪だった1970年の1万6765人に比べ、大幅に減少している(2012年は6,414人)。
一方、年間の自殺者数は、約3万人と高い水準が続いている(2012年は、15年ぶりに3万人を下回り2万7858人だった)。


交通事故も自殺も、毎日どこかで発生しているのに 、ニュース映像が流されるのは、もっぱら交通事故のほうだ。
特別な状況がなければ、自殺がニュースとして取り上げられることはない。
交通事故は映像化しやすく、自殺は映像化しにくいという、事情もあるのだろう。


自殺と同様、映像化しにくい「家庭内での不慮の事故」も、ニュースで放映されることはまずない。
2012年の人口動態統計によれば、「家庭における主な不慮の事故」による死亡者数は、全国で15,343人に達している。
交通事故の2.4倍だ。
「家庭における主な不慮の事故」の主なものは次の通り。( )内は、2012年の死亡者数。

  • 転倒・転落(2,745人)
  • 不慮の溺死及び溺水(5,498人
  • その他の不慮の窒息(4,329人)
  • 煙、火及び火炎への曝露(1,195人)
  • 有害物質による不慮の中毒及び有害物質への曝露(464人)

「家庭における主な不慮の事故」の中でも、「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数(5,498人)が多く、交通事故による年間の死亡者数(6,414人)に肉薄している。
グラフにすると、こんな感じ。
交通事故と「家庭における不慮の事故による死亡数」(年次推移)
溺死(不慮の溺死及び溺水)は、交通事故の死亡者数を上回りそうな勢いだ。
家庭内での溺死とは、具体的には浴槽で溺れ死ぬこと。
高齢者の場合、熱い風呂で、血圧が上がり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことがあるという。
平成24年の「不慮の溺死及び溺水」の年齢別の内訳は、次図のとおり。
「不慮の溺死」による年齢別死亡数
65歳以上の死亡者数が圧倒的に多いことが分かる。


浴槽での溺死が増えているのは、高齢者の人口が増えているからなのか?
人口動態統計をひも解くと、次図のように、65歳以上の人口は確かに増えていることが分かる。
65歳以上人口(年次推移)
そこで、「65歳以上」を対象に10万人当たりの溺死数をグラフ化してみた。
65歳以上の溺死数(10万人当たり)
「65歳以上」で1年間に浴槽で溺死するのは、10万人当たり12人〜18人。特に増加傾向にあるとまでは言い切れない。


理由はどうであれ、交通事故の年間死亡者数を上回りそうな勢いで増加している、高齢者の浴槽での溺死。看過すべきではない。
マスコミによる啓発記事、メーカーによる対策に期待したい。


ちなみに、「浴室内における事故防止自動装置」という特許が平成22年4月に公開されている。
倒れた人をセンサーで感知し、浴槽のお湯を短時間に排水するというアイデアだ。


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