[即日完売] “即日完売”の根拠事実をチラシに記載すべし!
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不動産経済研究所が7月15日に発表した「首都圏のマンション市場動向(6月度)」に「即日完売物件」として、4物件が掲げられている。
- 物件A 1期(文京区、50戸)
- 物件B 1期1・2次(江東区、75戸)
- 物件C 1期(茅ヶ崎市、141戸)
- 物件D 1期(南区、85戸)
「予告広告」でモデルルームに集客し、“即日完売”できる見通しが得られた段階で「本広告」を出して短期間で受付・抽選に走るというのが最近はやりの販促ワザだ。
では、不動産経済研究所が「即日完売物件」として掲げた4物件は本当に「即日完売物件」なのか?
4物件のうちの都内2物件について、調べてみた。
物件B(総戸数110戸、13階建)は“即日完売”演出物件?
75戸を“即日完売“したとされている、物件B(総戸数110戸、13階建)は、先日このブログでも取り上げたように、“即日完売”を演出した可能性が高い物件だ。
物件A(総戸数72戸、19階建)も“即日完売”演出物件?
では、50戸を“即日完売“したとされている、物件A(総戸数72戸、19階建)は、どうか?リクルート社のフリーマガジン「SUUMO新築マンション(首都圏版)」のバックナンバーをひも解いてみた。
この物件Aが「予告広告」として最初に登場したのはSUUMO 3月9日号。
その後の販売履歴は、次のとおりだ。
- 6月15日:第1期「本広告」販売戸数50戸「登録受付中 6/9迄」
- 6月22日:同上
- 6月29日:第1期「本広告」販売戸数50戸「分譲中」
- 7月6日:第2期「予告広告」販売戸数 未定
なんかヘンですね。
筆者が気になった2点、分かりますか?
一つ目は、最初の「予告広告(3月9日)」から3カ月ほど経過して、「本広告(6月29日)」を出している点。
つまり、冒頭に記したように、“即日完売”できる見通しが得られた段階で「本広告」を出して短期間で受付・抽選に走るという典型。
まあ、ここまでは最近の流行りなので、さもありなんということなのだが――。
二つ目にヘンなのは、“即日完売”したはずなのに、6月29日の段階でまだ50戸が「分譲中」となっている点だ。
第1期販売戸数50戸の登録受付締切が6月9日だから、翌日抽選だとしても、6月10日には“即日完売”されたことになる。
不動産経済研究所の「即日完売物件」情報が正しいとすれば、この物件Aは、6月10日に完売しているにも拘らず、6月29日まで「50戸」の販売を続けていたことになる。
SUUMOに掲載されている情報に5日間のタイムラグがあることを勘案してもヘンだ。
「物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示」は「おとり広告(第21条)」として禁じられている。
さて、物件Aは、“即日完売”演出物件なのか? 「おとり広告」違反物件なのか? それとも両方なのか?
不動産経済研究所の「即日完売物件」情報も、SUUMOの「分譲中」情報もいずれも正しいとすれば、次のような状況が推察される。
すなわち、煽って販売、無理やり“即日完売”した挙句、キャンセルが発生したという状況だ。
さあ、正解はいずれか?
「即日完売」の根拠事実をチラシに開示すべし!
「最高」とか「最高級」といった最上級を意味する用語や、「買得」とか「激安」という著しく安いという印象を与える用語を使用する場合には、その根拠事実をチラシに開示しなければならいのだが――。「完売」など、著しく人気が高く、売れ行きがよいという印象を与える用語を使用する場合には、「合理的な根拠を示す資料」を有していればいいことになっている(下記の条文参照)。
つまり、「完売」の根拠事実をチラシに開示する必要がないのだ。
このルール、なんとも業者寄りだと思う。
第18条(特定用語の使用基準)
- 第1項 ※省略。
- 第2項 事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。この場合において、第4号及び第5号に定める用語については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用することができる。
- (1) 物件の形質その他の内容又は役務の内容について、「完全」、「完ぺき」、「絶対」、「万全」等、全く欠けるところがないこと又は全く手落ちがないことを意味する用語
- (2) 物件の形質その他の内容、価格その他の取引条件又は事業者の属性に関する事項について、「日本一」、「日本初」、「業界一」、「超」、「当社だけ」、「他に類を見ない」、「抜群」等、競争事業者の供給するもの又は競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語
- (3) 物件について、「特選」、「厳選」等、一定の基準により選別されたことを意味する用語
- (4) 物件の形質その他の内容又は価格その他の取引条件に関する事項について、「最高」、「最高級」、「極」、「特級」等、最上級を意味する用語
- (5) 物件の価格又は賃料等について、「買得」、「掘出」、「土地値」、「格安」、「投売り」、「破格」、「特安」、「激安」、「バーゲンセール」、「安値」等、著しく安いという印象を与える用語
- (6) 物件について、「完売」等著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語
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