不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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周辺環境条件の開示のために(私案)

あたり一面が草原状態

都内最大の再開発エリアの一画に建つ最後の大規模マンション。

【予告広告】新宿駅20分(途中急行に乗り換え)、駅徒歩8分。総戸数219戸、13階建。販売戸数未定、3LDK(71.15m2)〜4LDK(100.22m2)。予定販売価格4,200万円台〜7,300万円台、最多価格帯4,900万円台。平成21年2月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年後)。

  • 2月17日(日)、3月2日(日)の物件と同じ。

02月17日(日) 立地環境も適切に表現すべし!でも取り上げた、広告裏面の上半分ものスペースを費やして描かれたCGについて、追加的考察。
物件の敷地周辺の一部を除いて、あたり一面が草原状態(右上の図参照)。
チラシには、小さな文字で次のような注釈がある。

  • 現地周辺概念イラスト
    • ※計画図面と住宅地図を基に描き起こした概念CGであり、実際とは異なります。

「概念イラスト」「概念CG」であって、「完成予想図」「完成予想CG」でなければ、あたり一面が草原状態でも許されるのか?
不動産公正取引協議会連合会 公正競争規約研究会の編著による「不動産広告の実務と規制(9訂版)」には、「図絵の表示(規則第11条第23号)」の項に、次のような見解が示されている。

【図絵の表示(規則第11条第23号)】
宅地又は建物の見取図、完成図又は完成予想図は、その旨を明示して用い、当該物件の周囲の状況について表示するときは、現況に反する表示をしてはならない。
「現況に反する表示」とは、例えば、新築分譲マンションの広告中に、実際には隣地に商店等の建物が立ち並んでいるのに、その部分に樹木を描くような場合である。
この場合に、隣地については何も絵がかない状態、いわゆる「白抜き」にした表示は直ちに本号の表示基準に違反するものとはいえない。
しかし、絵図以外の表示において、例えば「開放感あふれる住まい」等を表示した場合は、白抜き表示と相まって環境についての不当表示となろう。
(後略)

上記の見解に照らしてみると、本日の草原状態チラシは、「実際には隣地に商店等の建物が立ち並んでいるのに、その部分に樹木を描くような場合」に該当するだけでなく、絵図以外の表示において「都立○○公園(約370m/徒歩5分)」という表示と相まって環境についての不当表示であると指摘できるのではないか。
デベロッパーにしてみれば、右上の図は、「完成予想図」ではなく、あくまでも「概念イラスト」「概念CG」との抗弁がありそうだが――。
「概念イラスト」「概念CG」が敷地周辺の環境条件を正確に伝えていないことは、デベロッパー・サイドにメリットはあっても、消費者サイドにとってはデメリットしかないだろう。

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4年近くマンション・チラシを「定点観測」していて、周辺環境を巧みにごまかしている事例は次の3つに集約できる。

  • 「白抜き」や吹き出しなどで、迷惑施設等を覆い隠す
  • トリミング範囲を操作することで、迷惑施設等を表示範囲から外す
  • 植栽や河川の色をCG処理によって強調する

「図絵の表示(規則第11条第23号)」では、「現況に反する表示をしてはならない」と漠然としか規制していないので、このような周辺環境いんぺいチラシが蔓延している。
そこで、敷地周辺の環境条件を適切に開示するよう、図絵の表示に関して、筆者が具体的な私案を提示しよう。

【図絵の表示に関する周辺環境条件の開示のために(私案)】

  • (1)白抜きや吹き出し等による迷惑施設等隠蔽の禁止
    • 図絵の表示において、白抜きや吹き出し等をかぶせることによって、迷惑施設等を隠蔽してはならない。
  • (2)恣意的なトリミング(構図)の禁止
    • 敷地周辺を描く場合には、東西南北方向に対して、均等距離を範囲として描くこと。恣意的なトリミング(構図)によって、迷惑施設等を表示範囲から除いてはならない。
  • (3)過度なCG処理の禁止
    • 空撮された植栽や河川などを過度に着色してはならない。また、幹線道路や送電鉄塔等の迷惑施設等が目立たないような処理をしてはならない。

「白抜き」表示は直ちに違反ではないという現在の公正競争規約研究会の後ろ向きな姿勢でなく、幹線道路や送電鉄塔などの迷惑施設等のネガティブ情報を積極的に開示するレベルまで求めたい。

(本日、マンション1枚)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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