住民専用バスとは、マンションの立地の悪さを住民負担でリカバーしようとするデベロッパーの販促ワザのひとつ。
湾岸エリアに建つ、駅から遠い大規模マンションチラシの事例。
駅からの遠さをリカバーすべく、「住民専用リムジンバスで通勤楽々。駅へ1日46便運行!」を謳う。
研修を受けた運転サービス士が2台のバスを安全に運行。朝夕のラッシュ時だけでなく、夜11時台までの夜便も運行。仕事で遅くなった日にも駅からエントランスまで直通便で送るという。
ずいぶん充実したリムジンバスの運行サービスだが、詳細はどうなっているのか。
電話取材してみた。
電話取材
- 筆者「リムジンバスの運行は、どこかのバス会社に委託しているのですか?」
- 女性販売員「〇〇株式会社に委託しています」
〇〇株式会社は、1962年にアウトソーシングビジネスの草分けとして、企業や官公庁・自治体が保有する自家用自動車の運行管理を一括して請け負う自家用自動車管理事業を日本で初めて事業化した企業。
- 筆者「リムジンバスの車種はなんでしょうか?」
- 女性販売員「普通のバスです」
- 筆者「『普通のバス』といいますと?」
- 女性販売員「現在、駅から現地までご案内しているのと同じような車種です」
- 筆者「何人乗りですか?」
- 女性販売員「57人乗りです」
- 筆者「リムジンバスの運営費用はどうなっていますか?」
- 女性販売員「管理費に組み込まれています」
- 筆者「いくら組み込まれているのでしょうか?」
- 女性販売員「少々お待ちください」
- 筆者「・・・・・・」
- 女性販売員「月あたり230万円です」
年間で2,760万円!!
- 筆者「リムジンバス運行の契約条件はどうなっていますか?」
- 女性販売員「当初3年間契約となっていて、それ以後は自動更新です」
- 筆者「リムジンバスは『住民専用』となっていますが、知人・友人も乗れますか?」
- 女性販売員「住民の方は、ICカードキーで乗れるようになっています。友人の方には、運転手さんにその旨を言っていただければ乗れます」
マンションの立地の悪さを、年間3万円の住民負担でリカバー!?
月あたり230万円だから、総戸数896戸で割ると、1世帯あたり年間3万円(=230万円×12カ月÷896戸)の負担だ。
マンションの立地の悪さを、年間3万円の住民負担でリカバーしようというデベロッパーのもくろみ。
駅チカで交通の便のよいマンション用地を手配できなかったデベロッパーの尻拭いをさせられているような気がしないでもない。
自家用自動車管理事業を主としたアウトソーシングビジネスを展開している委託先が、今後10年、20年、同じ水準のサービスを提供してくれる保証がない点も気にかかる。
それよりもなによりも、住民専用リムジンバスで毎朝同じ顔ぶれといのも、気疲れしませんか。