不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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合成写真から広告主の都合の悪い条件を消去することは―

東雲キャナルコート(2006年8月撮影)

銀座一丁目駅直通5分、駅徒歩12分。総戸数440戸、41階建。販売戸数未定、1LDK(54.72m2)〜4LDK(140.97m2)。予定販売価格3,700万円台〜17,000万円台、予定最多価格帯6,000万円台。平成21年1月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年9カ月後)。

湾岸に建つ、周回遅れの大規模超高層マンション。
敷地の南側には建設中のものも含め、3棟の超高層マンションが立ち並ぶ。
チラシ裏面に掲載された「現地上空からの空撮写真」には、東京タワーを含む広い範囲を背景に、本物件建つ開発地域全体が写されている。
開発地域には本物件を含め合計4つの超高層マンションが建つのだが――。
トリミングでカットされた左端の1棟を別にすれば、3つの超高層マンションが建つことになる。
ところが、「2006年10月撮影」の「現地上空からの空撮写真」には、先行して建設中の1棟しか写っていない。
本物件のすぐ南側の超高層マンションはといえば、限りなく細い線で、とても視認しにきい白色のワイヤーフレームで薄っすらと表示されているだけだ。
しかも本物件のすぐ南側の敷地は、ゴルフ場のグリーンよろしく、きれいな緑がCGで施されている。
筆者が2006年8月(空撮の2カ月前)に撮影した写真と見比べてほしい。
隣の敷地は、きれいな緑状態でなく、すでに地下1階の躯体工事中だ。
もちろんチラシには、次のような注釈がある。

  • 現地上空からの空撮写真(2006年10月撮影)を基に一部CG処理を施しており、現地を表現したもので実際とは異なります。

業界の自主ルール「不動産の表示に関する公正競争規約」第23条(その他の不当表示)1項(43)号(写真・絵図)は、CGによる「事実に相違する表示又は実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」を禁じている。
首都圏不動産公正取引協議会のホームページの「相談&違反事例集」では、かつて「合成写真から広告主の都合の悪い条件を消去することはウソの写真を使うことに他ならず、著しい不当な表示に該当することになります」と明確に言い切っていたのだが――。
いつのまにか、このQAは、「相談&違反事例集」から消えてしまっている。
昨年の規約改定(1006年1月4日施行)で、一歩後退(デベロッパーにとっては一歩前進)か・・・・・・。
同QAを見たことのない人のために、長文だが原文のまま、以下に再掲しておこう。
※QAで言及している条項番号は、旧規約の番号であり、現行規約の番号とは一致していない。

■QUESTION
新築分譲マンションの広告に、近くの公園から建物を望む写真をCG(コンピュータグラフィックス)で合成し、その際、このマンションと公園の間にある他の建物を消去した合成写真を使用することは可能でしょうか。
なお、「この写真はCGによる合成写真ですので、実際のものとは異なります。」と注記するつもりです。


■ANSWER
ご質問のような合成写真の掲載は、「この写真はCGによる合成写真ですので、実際のものとは異なります。」と注記したとしても、取引対象物件からの眺望等が実際のものよりも著しく優れたものであると誤認される不当な表示に該当します。
一般に、新築分譲マンションはいわゆる青田売りが多いために、建物自体の写真を撮影することができないために、CGによる完成予想図と周りの風景写真を合成すること自体はその旨を明示する場合には許される場合があります。
しかし、お尋ねのように、合成写真から広告主の都合の悪い条件を消去することはウソの写真を使うことに他ならず、著しい不当な表示に該当することになります
なお、表示規約第15条35号では、「宅地又は建物の見取図、完成図若しくは完成予想図は、その旨を明らかにして用い、当該物件の周囲の状況について表示するときは、現況に反する表示をしないこと。」と規定しています。
また、第18条第1項においては、第37号にで「不動産の方位その他立地条件について、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」、第38号で「前2号に規定するもののほか、不動産の周辺環境について、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」を禁止しています。

(本日、マンション広告1枚)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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