不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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手付金を放棄しないで、契約を解除する方法


当ブログの掲示板(←今はない)に「大阪人」さんから、契約解除に係る次のような書き込みがあった。

「大阪人」さんの書き込み
私は本年の6月に〇〇(=物件名)の購入を決めた者です。
手付金をすでに300万払いました。2週間ほど前、耐震偽装の3件のことを知り、大変おどろきました。
先日△△(=デベロッパー名)の私の担当者Sさんにこの件について問い合わせの電話をしたところ、非常にあやふやで何も信頼できないような返事が返ってきました。
いま契約を解除すると、逆にこちらから手付金の倍をさらにはらわなければならないそうです。
私と同様に△△のマンションと契約してしまい、お困りの方、何か情報をお持ちの方、返答お願いいたします。

筆者は、弁護士資格を有していませんので、以下のコメントはあくまでも参考としていただければ幸いです。


契約解除に手付金の倍を払わなければならないのか?

売主(=△△)が、契約の履行に着手していなければ、大阪人さんは、手付け金の倍返しをする必要はなく、手付けの300万円だけを放棄することで、契約解除することが可能です。
なお、根拠は、次のとおりです。

  • (1)宅建業法 第39条(手附の額の制限等)第2項により、宅地建物取引業者みずから売主(=△△)となる売買契約の締結に際して手付けを受領したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主(=大阪人さん)はその手付けを放棄して、当該宅地建物取引業者(=△△)はその倍額を償還して、契約の解除をすることができることとされています。
  • (2)また、宅建業法 第39条(手附の額の制限等)第3項により、前項(=上記(1))の規定に反する特約で、買主(=大阪人さん)に不利なものは、無効とされています。



「履行の着手」とは?

売主(=△△)が各種の登記申請書類を用意したときなどが、「履行の着手」にあたります。
大阪人さんがお尋ねの物件は、平成19年3月下旬竣工予定です。
売主(=△△)が既に各種の登記申請書類を用意しているか否か、ご確認ください。
なお、「履行の着手」の定義の詳細は、次の通りです。

    • -

最高裁判例によれば、「履行の着手とは、債権の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す」とされています(最判昭和40・11・24民集19巻8号2019頁、最判昭和41・1・21民集20巻1号65頁)。
判例によれば、履行の着手の具体例としては、売主(=△△)が各種の登記申請書類を用意したときになどがこれに該当します(谷口知平ほか編『注釈民法(14)[新版]181頁』)。


手付金300万円を放棄しないで、契約を解除する方法はあるか?

相手方(=△△)に債務不履行があれば、債務不履行による契約解除が可能です。
債務不履行による契約解除は、手付け解除とはまったく別の理由によるものなので、手付け放棄の必要がなく、さらに買主(=大阪人さん)には、損害賠償請求が認められます。
売主(=△△)の債務不履行の例としては、重要説明事項義務違反などがありますので、契約締結時の売主とのやり取りにつき、ご確認ください。
なお、売主(=△△)の債務不履行の詳細は、次の通りです。

    • -

宅建業法35条で規定される重要事項説明義務、同47条1号で規定される重要な事実の告知義務ないし不実告知の禁止は、取引関係者に対する信義誠実の原則(宅建業31条)に基づく善管注意義務を根拠とするもので、宅建業者の業務上の一般的注意義務と解されています(最判昭36.5.26民集15-5-1440)。
したがって、売主たる宅建業者(=△△)が違反した場合には、売主として債務不履行民法415条)を負うこととなり、買主(=大阪人さん)には、損害賠償請求が認められます。

以上、【参考文献】日本マンション学会法律実務研究委員会編「マンション紛争の上手な対処法(第3版)」平成18年5月11日 民事法研究会。

(本日、マンション広告なし)

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