東京駅直通8分、駅徒歩8分。総戸数869戸、47階建。販売戸数440戸、1LDK(42.79m2)〜4LDK(171.54m2)。販売価格2,860万円〜1億8,540万円、最多価格帯4,900万円台。平成19年11月下旬竣工(本チラシ掲載日の2年4カ月後)。
2年以上も先の竣工なのに、精力的にチラシを打っている、47階建ての超高層マンション。
「多くの人たちは超高空の住まいにあこがれる。50年ほど前に学者たちが高空住居の生理的な課題、子育てに向かないことを警告したことは、何事も無かったように、ただ願望の超高層なのである。果たして大勢で渡れば超高層住宅という赤信号は危険ではなくなったのだろうか」
「超高層集合住宅の可能性と問題点」と題して、7月11日(月)に日本建築学会主催の緊急研究討論会が開催された。
会場定員の200名に近い参加があり、補助席が出された。日本建築学会主催の討論会としては、異例なほど多くの人が参加し、この問題への関心の高さがうかがわれる。
上記の赤信号文章は、パネラーのひとりである服部先生(千葉大学)が配布資料に書かれたものだ。
全パネラー6名のうち、デベロッパーの1名を除くと、残りは全員大学の先生。
建築系の先生3名、環境心理学の先生1名、母子保健・居住環境に詳しい医学部の先生。
3時間15分の討論会で結論が出たわけではないが、次のような超高層マンションに係わる問題の共通認識は高まったようだ。
※次の文章は、パネラーの渡瀬章子先生(奈良女子大学)の配布資料からの抜粋。
- 防災(火災や地震時の情報伝達や緊急避難への不安)
- 阪神淡路大震災では、エレベーターが停止した際の高齢者や身障者の階段昇降、水などの生活物資の運搬が極めて困難になった。
- 防犯
- 超高層住宅は、住戸規模が大きく、エレベーターを利用する人々が顔見知りになる割合が低く、エレベーター利用時の不安感が高い。
- 心身への影響
- 高層化に伴う外出機会の減少は、心身のストレスを増大させ、高血圧症や妊娠障害などの出現率を高めるという報告がある。
- 子供の外出機会の減少・発達障害
- 母子密着が過度になることによって幼児の生活習慣の自立が遅れる傾向にあることも報告されている。
- コミュニティ形成
- 高層化は、人々を単に地面から切り離すだけでなく、周辺環境にたいする関心を希薄なものにし、良好なコミュニティ形成のチャンスを奪うものである。
このような超高層マンションの問題が、社会全般に広く認識されていないこと自体も問題である、とパネラーから指摘された。
母子保健・居住環境に詳しい織田正昭先生(東大医学部)の次のコメントが印象的であった。
- 超高層住居の母子の健康への影響を証明することは難しい。居住環境の変化に対して、証明する(研究の)スピードが追いつかないからだ。たとえ証明できなくても、問題を提起し、次世代につなげてくことが重要だ。