金曜日、マンション・チラシ9枚。
東京駅直通29分(快速利用)、駅徒歩10分。総戸数290戸(うち賃貸住戸34戸)、14階建+10階建+8階建。販売戸数未定、3LDK(77.75m2)〜4LDK(129.77m2)。販売価格未定。平成19年3月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年10カ月後)。
湾岸エリアに建つ大規模マンション。
住戸の規模が大きく、二重床・二重天井、コンクリートスラブ厚200mm〜300mm、約100年の耐久性能を目指した高規格コンクリートなど、周辺環境はともかく、建物としての永住仕様は満たしていそうだ。
- 「焼きたてパン」販売
- エントランス・ラウンジでは、焼きたての美味しいパンを味わっていただけます。
マンション・チラシで、なぜゆえに「『焼きたてパン』の販売」なのか?
ホームページで確認すると次のような記載があった。
- スイス生まれのパン店「ヒーシュタント」と提携し、焼きたてのパンを販売いたします。ピュアバターと、健康に配慮した原材料を使用しているので、お子様にも安心な美味しさ。
パン生地はすべて無添加、無農薬で確かな品質と安全性を提供します。
「ヒーシュタント」のパンは、いろいろ工夫された生地や無農薬栽培された材料を使用している高品質なパンらしい―。
マンションの販促手段として、スイスの高級パン販売サービスをうたったチラシは初めてだ。
具体的な仕組みを探るべく、電話取材してみた。
- 筆者「焼きたてパンの販売とありますが、マンションの住人しか買えないのでしょうか?」
- 男性販売員「そんなことはないのですが、共用部での販売となりますので、オートロックの関係で、部外者は入って来れないようになっています」
- 筆者「エントランス・ラウンジで販売されることになっていますが、そこで実際に焼くのですか?」
- 男性販売員「はい。フロントサービスのスタッフが焼くことになります」
- 筆者「素人が焼くのですか?」
- 男性販売員「スイスの生まれの『ヒーシュタント』社と提携しまして、オーブンを共用施設に設置し、パン生地はそこから仕入れることになります」
- 筆者「エントランス・ラウンジの一角にパンを作る作業所を設けるということですね」
- 男性販売員「はい。でも2畳くらいのスペースで対応できます」
- 筆者「パンの販売収入は、誰のものになるのでしょうか?」
- 男性販売員「マンション管理組合の収入となります」
- 筆者「『ヒーシュタント』社との提携料は、どうなりますか?」
- 男性販売員「・・・・・・」
- 筆者「クリーニングなどの受付業務も行うフロントサービスのスタッフが毎朝パンを焼くのですね」
- 男性販売員「そうです」
- 筆者「土日も含めて毎日ですか?」
- 男性販売員「毎日です」
- 筆者「『ヒーシュタント』社との提携は、何年契約となるのでしょうか?」
- 男性販売員「その辺の詳しいところは、まだ決まっていません」
フロントサービスのスタッフが、この先何十年も毎朝高級パンを焼いて販売し続けることは、はたして可能か?
「焼きたてパン」販売の経営者は、マンション管理組合。総戸数290戸の狭い市場を相手に、黒字を続けることは難しそうだ。
オーブンが壊れたところで、「焼きたてパン」販売の事業は撤退か―。
それにしても、「焼きたてパン」販売を、マンションの販促に取り入れるなんて、デベロッパーもいろいろ考えるものですな。