不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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共用施設が貧弱なマンションなのに、なぜ分譲価格が高いのか?

中央線沿線ギワ際の成熟した街に立つ中規模マンション。

新宿駅直通12分、駅徒歩5分。総戸数83戸、8階建。販売戸数4戸、2LDK(63.73m2)〜3LDK(77.54m2)。販売価格5,300万円〜6,100万円。平成17年3月上旬竣工(本チラシ掲載日と同月)。

チラシには「暮らしをやさしく包み込む静寂の環境」とあるが、全ての窓が遮音性能の高い二重サッシとなっている。駅チカ徒歩5分と便利ではあるが、線路ギワだから鉄道騒音の影響が快適なマンション・ライフに影を落としている。
竣工月を迎え、総戸数83戸のうち5%(=4戸÷83戸)が売れ残り。
「物件概要」から浮かび上がるのは、共用施設がとても貧弱なわりに分譲価格が高いことだ。
エレベーターは9人乗りではあるが、たったの1台しかない。朝の通勤時の待ち時間が長そうだ。また、毎月の保守点検時には、上層階の住民は階段昇降運動を強要されるかもしれない(少なくとも故障した場合には、昇降運動をせざるを得ないだろう)。
駐車場が42台(うち1台が身障者用)だから、2世帯に1台の割合。交通の便がいいので、この駐車台数の少なさはそれほど問題にはならないだろう。なぜならば、マンションの駐車場利用料が月額2万円〜2万6千円に設定されているので、仮に駐車スペースが足りなければ外部に同額の駐車料金を払って借りることで対応可能だからだ。
でも、ミニバイク置場が、たったの4台。20世帯に1台は、少なさそうだ。特に、自転車置場117台、1世帯に1.4台は、あまりにも少ない。
このように共用施設がとても貧弱なのは、本物件の地価がとても高いことに起因しているのではないだろうか?
2LDK(63.73m2)5,300万円〜3LDK(77.54m2)6,100万円だから、m2当たりに換算した分譲価格は、83万円/m2〜79万円/m2。とっても高い。
JBCI2004(ジャパン・ビルディング・コスト・インフォメーション)のデータベースを利用してコストシミュレーションをすると、本物件の基本情報から想定される工事費は、17万円/m2となる。

  • JBCI2004 とは、(財)建設物価調査会総合研究所が建設会社、設計事務所の協力のもと独自に建築コストデータ(契約価格)を収集し、建築用途別に大科目コストと各種要因との関係などについて統計的に分析を行ったもの。

分譲価格が83万円/m2〜79万円/m2だから、工事費との差66万円/m2〜62万円/m2が、土地代とデベロッパーの経費ということになる。
荒っぽくいえば、建築工事費は分譲価格の約1/4(=17÷64)でしかない。線路際の騒音環境的にはあまりよろしくない敷地のわりには、ずいぶんと高く設定された分譲価格は、バブル時代の割高な土地代ゆえだろうか。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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