都心に立つ地上47階建ての超高層大規模マンション。
東京駅直通8分、駅徒歩8分。総戸数869戸、47階建。販売戸数未定、1LDK(42.79m2)〜4LDK(171.54m2)。販売価格2,000万円台〜1億8,000万円台。平成19年11月下旬竣工(本チラシ掲載日の2年8カ月後)。
スーパーゼネコンの施工による免震マンションだから、大地震でもおそらく問題ないだろう。
建物構造的には問題ないだろうが、社会構造的には、これまでも何度か記したように大いに懸念されることがある。
ヨーロッパ先進国には高層マンションを禁止している国が少なくないそうだが、日本ではそのような動きは今のところみられない。
多くの研究者が高層マンションの社会的問題を指摘しているが、建設業界の勢いにかき消されているのだろうか。
高崎健康福祉大学の松本恭治教授の論文(日本マンション学会誌 第20号 2004年12月1日)から、ヨーロッパ先進国が高層マンションを中止または禁止している論点を以下に紹介しよう。
- 高層住宅居住者への公衆衛生的研究成果では主婦の精神的疾患が多いこと、子供に呼吸器系疾患が多いこと、乳幼児の自立が遅れること、親子が密着し過干渉が多いこと、社会心理の研究成果では社会的孤立者が生まれやすいこと
- 死角が多く自然の監視機能が低下するため犯罪が発生しやすいこと、バンダリズムが生じやすく器物の破損が多いこと
- 建物保全・安全確保の点からは管理費・修繕費用が過大になりやすいこと、災害に対して弱点が多いこと、近代建築の構成部材は安普請だから次の世代に譲り渡す優良な資産となり得ないこと
- 市民の心のよりどころである教会建築を超えたり、市民社会の権利の象徴としての市庁舎の高さを超える建物を良しとしない伝統があること
- 都市景観の観点からは高層住宅は軒線を揃え、連続性を協調した伝統的街並みと相容れないとの認識があること
大規模な超高層マンションともなると、場合によっては村や小さな町のコミュニティのサイズを越えている。
将来を見すえた街づくり、優良な社会資本の形成の枠組みづくりは、本来的には行政の仕事だ。でも、現状の超高層マンションの建設ラッシュは、デベロッパーによる住宅市場をにらんだ人気商品開発のレベルですすんでいる。
超高層マンションが林立する地域に明るい未来はあるのだろうか。