不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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超高層マンションの足元は脆弱?

新橋駅直通13分、駅徒歩2分。総戸数525戸、33階建。販売戸数23戸、1LDK(53.11m2)〜3LDK(109.58m2)。販売価格3,760万円〜9,650万円、最多価格帯4,100万円。平成18年5月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年3カ月後)。

33階建ての超高層ツインタワーマンション。中堅ゼネコンの施工なので、基礎構造や耐震性能など、「建築構造的」にはまず問題ないだろう。
でも、「社会構造的」には、はたして大丈夫だろうか?
最終期1次の販売戸数23戸の販売価格は、3,760万円〜9,650万円とかなりの幅がある。専有面積当たりに換算すると、71万円/m2〜88万円/m2だ。
高層部の住戸の価格は高く(88万円/m2)、低層部の住戸は安い(71万円/m2)。眺望の良い高層部の住戸の価格が高いのは当然だ。高層部に住む人は、経済的に余裕のある人だ。では、超高層マンションの低層部に住む人は、どのような人か?
①超都心で執務する必要のあるSOHO住人。②郊外に戸建を持ち、平日の「痛勤」回避用に2つ目の住居を都心に持つ経済的に余裕のあるビジネスマン。
③都心の超高層マンションに憧れ、高層部の住戸にはチョット手が出ないが、安価な低層部ならば購入可能な人たち。
問題は、③の人たち。たとえ大幅な値引きで、低層部の住戸を手に入れることができても、その後、月々の管理費・修繕積立金などの負担に耐えていかなければならない。
本物件の管理費・修繕積立金は、次のとおりだ。

  • 管理費:15,300円/月〜31,700円/月
  • 修繕積立金:4,780円/月〜9,860円/月

金額に幅があるが、実は、専有面積当たりに換算すると、管理費は月額288円/m2、修繕積立金は月額890円/m2と、高層部・低層部の差はない。
つまり、エレベーターをよく使う高層部の住人も、エレベーターをほとんど使わない1階の住人も、毎月の管理費・修繕積立金の負担は、専有面積当たりにすれば変わらないのだ。
経済的に余裕のある高層部の住人とそうでない低層部の住人が同じ金額を支払うということは、当然、低層部の住人のほうが負担感は大きいはずだ。
国土交通省が実施した「平成15年度マンション総合調査結果」によれば、501戸以上の規模のマンションにおいて管理費・修繕積立金を6カ月以上滞納している戸数の割合は、18.5%(約2割)。200戸以下の規模のマンションでは1割を下回っている滞納者の割合が、500戸を越えると約2割に増えている。
もし、経済的に余裕のない低層部に住む住人が、高い費用負担に耐えられなくなったとき、超高層マンションの不良資産化は、低層マンション以上に加速する可能性がある。
高層部に住む経済的に余裕のある住人は、常に足元(低層部の住人の費用負担能力)を心配しながら暮らす必要がある。
エレベーターや防災設備など、超高層マンションに不可欠な設備を機能・維持するためには、低層マンションよりも高い管理費・修繕積立金を必要とする。
管理費・修繕積立金を経済格差のある高層部の住人と低層部の住人が同等に負担するという「社会構造的」ゆがみが、超高層マンションの足元を脆弱にしているのではないだろうか。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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